青少年事情と教育を考える 43
子供の健全な成育を守る

ナビゲーター:中田 孝誠

 今月8日、「成育医療等基本法案」(成育基本法)が国会で可決、成立しました。
 全ての妊婦と子供に妊娠期から成人するまで、医療・教育・福祉の支援を切れ目なく保障し、子育て環境を整備して、子供たちの心身の成長を守るというものです。

 成育基本法は、日本医師会、日本産婦人科医会、日本小児科医会などが以前から成立を求める運動を行っていました。今回、深刻な児童虐待事件が問題になっていることを受け、与野党が超党派で取り組み、成立にこぎつけました。

 具体的には、子供の健全な成育のため、国や自治体、関係機関が責任を果たすよう求めています。

 例えば、妊産婦が健康診断を適切に受けられるようにして孤立を防いだり、親(保護者)の心身の健康について支援します。それによって虐待の予防や早期発見もできるようにするというわけです。

 また、科学的な研究成果による子育ての知識や食育の普及、予防接種や健康診断のデータベース化など子供たちの心身の健康を守るための取り組みを進めるということです。

 基本法ですから、この法をもとに、今後、基本計画やさまざまな政策が打ち出されていくことになるでしょう。

 法律制定を推進してきた日本小児科医会の松平隆光名誉会長は、子育て支援の基本は「子供の視点で考えること」「子供の発育にとって家庭こそが基本の場所であり、行政の支援やは家庭での子育ての質を上げることを目的とすべき」と語っています。子供の健全な成育のために家庭と地域と自治体、国が支え合うことが大切だというわけです。

 子供の養育環境を改善し、子供の健全な成長を守ること。これは家庭と社会の最も重要な役割の一つです。現在、家庭教育支援条例を制定する自治体も増えつつありますが、こうした法律や条例を通して、子供と父母、家庭を保護する政策を実施することが、今最も重要だと考えます。