青少年事情と教育を考える 41
「中1ギャップ」と「10歳の壁」

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回に続き、「中1ギャップ」について考えてみます。
 
 「中1ギャップ」は、中学校に入学した新1年生が、小学校の時より大きな壁を感じ、中学生活に溶け込めない状態を言います。不登校やいじめなど特徴的な変化が見られ、誰もが経験する大きな転換期であることが分かります。

 発達心理学が専門の渡辺弥生・法政大学教授は、中1ギャップは10歳前後から芽生え始めていると述べています(『中1ギャップを乗り越える方法』宝島社)。
 教師の間でも、9歳から10歳で勉強につまずきやすいと認識されているそうです(もちろん、勉強する内容が難しくなるということもあるでしょう)。
 勉強だけでなく、子供の心身の成長など、発達心理の面から見ても変化が大きいということで、この時期は「10歳の壁」と呼ばれています。

 渡辺教授によると、10歳頃の変化の特徴として、次のようなことがあります。

○第二次性徴が始まり発達の速度が速まる。

○友達関係で、同じ趣味の子同士がグループを作ったりするが、自分が仲間外れにならないよう気を付けたりする。

○自分の人生に最も大きな影響を及ぼす他者は親だったが、友達や担任が重要な影響を及ぼすようになる。

○自己意識が変化して他の子を意識し、「自分より頭がいい」「自分よりピアノが上手」というように比較して、自尊心が低下しやすい。自己意識が高まって劣等感を感じることもある。

○親離れで親との会話が減り、友達との会話が増えていく。話の中身も、家族にはうれしいことは伝えても、怒りや悲しみは伝えない。

○自分の行動や考え方、性格などを、別の立場から見て認識することができるようになる(メタ認知)。

○今までより時間的展望ができるようになる(将来の夢に対する見通しなど)。

 では、この時期に親ができることは何か。
 渡辺教授は、子供の発達を知り、関心を持つことを勧めています。親としてはどうしても子供を叱ったり、他の子と比較したりしてしまいやすいのですが、正解・不正解や優劣をつけるのではなく、まずは子供の気持ちを受け止める。そして、この世界に生を享(う)け、自分が生きているのは素晴らしいことだということを親が身をもって示すことだと言います。

 もちろん、親として何より大切なのは「愛情を伝える」ことです。愛される時に感じる本当の幸せを忘れず大人になると、他の人と幸せを共有できる人間としての素地が出来上がる、と渡辺教授は言います。