https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4325

シリーズ・「宗教」を読み解く 371
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る母なる者の使命③
タマル

ナビゲーター:石丸 志信

 ヤコブは勝利者として認められ、「イスラエル」という名を与えられた。
 こうしてアブラハム、イサク、ヤコブの3代でイスラエル民族の基が据えられた。彼らは民族の父祖であり、その妻サラ、リベカ、ラケルとレアは民族の母となった。

 続く創世記の物語はヤコブの子らを通して12部族が生み広がることを予見させる。
 その中で主人公となるのは11番目の息子で愛妻ラケルの初子ヨセフだ。

 憎しみ嫉妬で引き裂かれた兄弟が和解への道をたどる物語の中心にヨフが立っている。
 それならば、イスラエル民族の母たる者の栄光はヨセフの妻に受け継がれてもよさそうだが、聖書はそうは語っていない。

 ヨセフの妻アセナテがエジプトの祭司の娘だったからだろうか。そしてヨセフも12部族の一つに名を遺(のこ)すことができず、アセナテとの間に生まれた息子マナセとエフライムが代わって12部族の名となった。

 ヤコブの息子たちの中でヨセフの他に特別なエピソードが記されているのが四男ユダだ。
 そして聖書は長男の嫁となったタマルに注目している。ユダとタマルのエピソードはヨセフ物語の中に唐突に差し挟まれているのだ。

▲ユダとタマル

 継嗣(けいし)を遺さないまま夫を亡くしたタマルは、イスラエルの血統が途絶えるのを恐れ、舅(しゅうと)ユダを誘惑しその子を宿した。寡婦が不貞を犯したと殺されかけたが、ユダの子であることが証明され死を免れた。
 その子は双子で、胎内で争いながらも、ヤコブとエサウの時とは違って、弟が兄を押しのけて先に生まれ出てきた、と記されている。

 なぜここでタマルのことが語られるのかは明確には分からなくとも、イスラルの民は「律法」に記された母としてタマルを蔑視することはなく、かえって敬意を払ってきた。
 イスラエルの歴史を再構成した歴代志上にはイスラエルの子らの系図が書かれている。そこにはこうある。

 「ユダの子らはエル、オナン、シラである。この三人はカナンの女バテシュアがユダによって産んだ者である。ユダの長子エルは主の前に悪を行ったので、主は彼を殺された。ユダの嫁タマルはユダによってペレヅとゼラを産んだ。ユダの子らは合わせて五人である」(歴代志上 第234節)

 ペレとゼラがユダの正統な子で、この系図はペレにつながる。
 イスラエルの伝統に立って書かれたマタイ福音書の冒頭には、アブラハムに始まりダビデを経てイエス・キリストに至る系図が記される。
 そこにもはっきりと「ユダはタマルによるパレスとザラとの父」(マタイによる福音書 第13節)と彼女の名を刻んでいる。

 その子孫にダビデ王が生まれたと聖書には明記され、イスラエルの民は彼女の名を記憶してきた。そして、その系譜から神の子であるイエスが誕生したのだと福音書は告げている。



★おすすめ関連動画★

ザ・インタビュー 第22回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その1)「超宗教運動の30年を振り返って」】

U-ONE TVアプリで視聴する


ザ・インタビュー 第23回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その2)「宗教者の対話を促進する『超宗教フォーラム』」】

U-ONE TVアプリで視聴する


ザ・インタビュー 第24回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その3)「宗教者の役割と祈りの重要性」】

U-ONE TVアプリで視聴する


ザ・インタビュー 第25回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その4)「超宗教平和運動への召命」】

U-ONE TVアプリで視聴する

---

 U-ONE TVの動画を見るにはU-ONE TVアプリが必要です!
 無料ですので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

ダウンロードはコチラから

Android

iOS

ダウンロード方法について

▲画像をタッチすると視聴できます