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スパイ防止法⑪
今もスパイ活動が行われている

編集部編

 今回は、2020年の1月と2月に発覚した民間企業へのスパイ事件についてお伝えします。

 まず120日ですが、三菱電機がサイバー攻撃を受けていたことを明らかにしました。
 三菱電機は日本の防衛産業、つまり自衛隊の武器を製造する企業の一つです。
 三菱電機側としては、盗まれたのは社員の個人情報ぐらいであって、軍事機密ではないと言っていました。しかしその後に、実際には防衛機密が盗まれた可能性があることが分かっています。

 サイバー攻撃を行ったのは、中国の「Tick」と呼ばれるグループです。この集団は、アジア地域に限ってサイバー攻撃を行うグループです。

 かなり緻密に組織化されていて、民間のグループではないだろう、おそらく中国軍の部隊だろうと考えられています。
 つまりこのサイバー攻撃を仕掛けてきたのは、中国政府そのものではないか、というわけです。

 もちろん、三菱電機は日本の防衛機密を扱っているわけですから、サイバー攻撃の対策のためにもそれなりの予算をかけています。それでもその対策が破られてしまいました。

 どうやって破ったのかというと、まずは三菱重工の子会社に目を付けました。
 その中でも中国に進出している企業を狙ったようです。

 小さな会社であれば、サイバー攻撃対策には大きな予算をかけられません。もちろん大した情報も持っていません。でもその中に、日本の本社を攻撃するヒントがあるかもしれないのです。

 そうやって膨大な情報を盗んでいるうちに、ついに三菱重工本社へのサイバー攻撃に成功しました。つまり彼らの取り組みは、かなり計画的なものだったということなのです。

 次に、ソフトバンクの社員が社内の機密情報をロシア人スパイに渡したということで逮捕され、125日に各メディアが一斉に報道しました。

 ロシア人スパイには警視庁が出頭を要請したのですが、ロシア人スパイは要請を無視して堂々と帰国してしまいました。

 スパイ行為を行ったのはロシアの外交官でした。ですからスパイ行為は、ロシアが国家ぐるみで行ったものだったということです。

 130日、今度はNECがサイバー攻撃に遭っていたことが明らかになりました。NECは、三菱電機と共に軍事産業を扱う企業です。

 26日には、神戸製鋼所と航空測量大手の「パスコ」という企業がサイバー攻撃を受けたことが明らかになりました。
 これだけのスパイ事件が同時に明らかになったのは、おそらく戦後で初めてでしょう。

 以前、安倍政権下で特定秘密保護法が制定されたというお話をしました。
 どんな法律かというと、公務員が国家機密を漏洩(ろうえい)したら、かなりの厳罰を科すことができるというものです。

 この法律の制定によって、日本の国家機密の漏洩はある程度防げるようになりました。当時はだいぶ反対されましたが、実際にはかなり評価できる法律だということです。

 今回の事件を見ると、どれも民間企業に対するスパイ活動です。つまり公務員は関係していないので、特定秘密保護法では情報の漏洩を防げない事件ばかりなのです。

 おそらくこれは、中国やロシアが日本の法律の穴をよく知っていて、その上で行っているからなのだと思います。

 現代では、民間企業にもかなりの機密情報があります。高いリスクを冒して公務員に近づくよりも、民間から情報を盗んだ方が効果的だと判断したのでしょう。

 そのように考えると、特定秘密保護法だけでは限界であるということがよく分かると思います。
 やはりスパイ防止法がなければ情報は守れない、ということなのです。

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