ほぼ5分で読める勝共理論 82
スパイ防止法⑩
中国の情報戦

編集部編

スパイ活動を行っていた中国大手通信会社
 中国には「ファーウェイ(HUAWEI)」という非常に大きな通信会社があって、同社の最高幹部の一人が2018年にカナダで逮捕されました。

 なぜ逮捕されたのかというと、このファーウェイという企業が、国家や軍と一緒になって、さまざまなスパイ活動を行っていたからです。

 例えば、ファーウェイの情報機器がアメリカのある国家機関に配置されたことがありました。

 簡単に言うと、ファーウェイ製のコンピューターを導入したのですが、そのコンピューターには「バックドア」、つまり後ろから開く秘密のドアがあって、知らない間に全ての情報が中国に流れていたのです。

 中国はこの情報を外交に役立てました。外交は基本的に駆け引きですから、相手の手の内を知ると大変有利になるのです。

 情報が知的財産だったら偽物の商品をつくって世界中に売り飛ばします。この損害額を計算すると、1年間で6兆円ほどになるのです。
 もしこの情報が軍事機密であれば、その損害額はお金に換算することはできません。

 例えばアメリカは、レーダーに探知されないステルス性の戦闘機を何十年もかけて開発しました。ところが中国軍は、似たような戦闘機を数年で造ってしまいました。
 アメリカの技術を盗み取ったのは間違いありません。これは安全保障にとっても、とても大きな問題です。

 ちなみに中国には、民間企業は政府のスパイ活動に協力しないといけないという法律があります。これを「国家情報法」といって、2017年に作られました。
 ですから政府が要請する以上、ファーウェイに断る自由はありません。

中国はアメリカを超えた?
 さらにファーウェイは、5G(第5世代移動通信システム)の開発で世界の先頭を走っています。5G4G10倍以上の速さのシステムです。これで世界は大きく変わるのです。

 中国では、ある街を全て5Gにする実験をしています。車は大半が無人運転で、コンピューターで交通量を計算しているので渋滞も起きません。

 物の移動はドローンを使います。たくさんのドローンが飛んでも全て管理されているので衝突しません。
 家の掃除は留守の間にリモコンによって自動で行います。

 こうして社会の基本となる部分に5Gを組み込むことで、社会の在り方が大きく変わってしまうのです。

 この分野では、アメリカは中国に出遅れています。中国は国ぐるみで取り組んでいるので、アメリカの大企業といってもとても太刀打ちができないのです。

 それで中国は、この5Gのインフラをかなり安い値段で世界に広げようとしました。これでファーウェイのインフラが世界中に広がれば、世界中の情報を全て握ることができます。場合によってはアメリカだって脅迫できるかもしれません。

 こうした背景があって、アメリカはついに、ファーウェイの排除に本格的に乗り出しました。

 以上の話が、最初に挙げたファーウェイ幹部の逮捕の背景です。

 改めて言いますが、現代の社会では、情報にかなりの価値があります。
 情報システムをどうやって開発するか。そしてその情報をどうやって守るのか。そんな時代がもう来ているということです。それが世界の流れなのです。

 ところが日本では、情報を守るためにスパイ防止法を作ろうというと、そんなことをしたら戦前の暗黒社会に戻るじゃないかといって反対するのです。

 今、世界でどんなことが起きているかではなくて、今から70年以上も前の、家にテレビがなかったような時代の話を持ち出してくるのです。

 本当に日本の平和と安全を守りたいと考えるのであれば、いかに日本の情報を守るかということを考えないといけません。その意味で、やはりスパイ防止法は大切なのだ、ということなのです。

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