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青少年事情と教育を考える 294
児童相談所の一時保護に司法判断

ナビゲーター:中田 孝誠

 児童虐待の対策として、このところ課題になっているのが「一時保護」です。

 虐待など子供の生命に危険があると判断した場合、一時的に保護者から引き離して児童相談所(児相)に付設されている一時保護所に保護することができます。
 保護期間は2カ月をめどにしていますが、延長されることもあります。保護は年間約3万件あります。

 これまでは児相が独自に判断していましたが、子供を返すよう求める保護者とトラブルになるなど、問題が指摘されてきました。
 児相の判断で一時保護を継続し(本来は家庭裁判所の審査が必要)、保護者が児相を訴えるなどのケースもあります。

 先月末には、佐賀市の乳児院で一時保護されていた乳児の母親が子供を返すよう求め、職員を切りつけて死亡させるという事件も起きています。

 こうしたトラブルを防止するため、今月から裁判所の司法審査が導入されました。
 保護者が反対した場合などに、児相が一時保護状を請求して裁判所の審査を受け、一時保護が認められるという仕組みになりました。一時保護を請求する際には、保護者と子供にも意見を聞きます。

 一方で、司法審査を求めるまでの児相の事務負担が大きくなるため、児童福祉司などの人員強化が今後の課題になっています。

 2023年度(令和5年度)、児童相談所が対応した児童虐待の相談対応件数は225509件で、前年に比べて1万666件(5%)増加しました。

 また、警察庁のまとめでは、2024年度(令和6年度)に事件として扱われた児童虐待摘発件数は2649件に上っています。亡くなった子供は52人、虐待の加害者は実父1233人、実母704人でした。

 児童虐待の改善策として、親子を一時的でも引き離した後に「親子の再統合」(親子関係の再構築)という取り組みが行われることもあります。

 何より子供の健全な成長を考えると、こうした取り組みが重要になってくると思われます。