2025.06.10 17:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
韓国新大統領、李在明氏はどこに向かうのか
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、6月2日から8日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
韓国大統領選挙、李在明(イ・ジェミョン)氏当選(6月3日)。マスク氏、米巨額歳出法案を痛烈批判(3日)。天安門事件36年、続く厳しい情報統制(4日)。習近平主席が李在明氏に祝電、「中韓関係を重視」(4日)。米露電話会談、すぐ和平につながらず(4日)。習主席とトランプ大統領が電話会談(5日)。李在明氏がトランプ氏と電話会談(6日)、などです。
昨年12月の非常戒厳が「違憲・違法」だとして、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が罷免されたことを受けて大統領選挙が行われ、6月3日が投開票日でした。
その結果、李在明氏が当選したのです。
李在明氏の獲得票数は1728万7,513票で得票率は49.42%、金文洙(キム・ムンス)氏は1439万5,639票獲得で得票率41.15%、そして3番目は李俊錫(イ・ジュンソク)氏で291万7,523票獲得し8.34%の得票率となったのです(4番目以下は省略)。
保守系は李在明氏に対抗するため、金文洙氏と「改革新党」の李俊錫氏の一本化を模索しましたが実現しませんでした。実現していたら、わずかですが逆転の可能性はあったのです。
李氏は国会議事堂で4日、就任演説を行いました。そこで、「全ての国民を包み込み、奉仕する『みんなの大統領』になる」と訴えて、政治・社会的な対立と分断を解消する決意を示しています。
外交面では「強固な韓米同盟を基盤に韓米日協力を強化していく」とし、対北朝鮮の核の脅威に対しては「韓米軍事同盟に基づく強力な抑止力で、軍事的挑発に備える」と述べました。
一方で「北朝鮮との対話の窓口を開き、韓半島の平和を維持する」と語り、対北朝鮮強硬路線を続けた尹前政権との違いを明確にしています。
対日関係については「経済問題も安全保障問題なども双方に有益なものを十分に見つけることができる」とし、元徴用工、慰安婦問題については「国家間の信頼問題があるため(一貫性を)考慮しないわけにはいかない」と述べています。
しかし残念ながら演説のごとくにはならないでしょう。すでに政敵である保守層への報復の動きはありますし、日韓関係について李氏が過去語った内容を見れば演説が空虚なものに聞こえてくるのです。
韓国新与党となった「共に民主党」は、前政権への新たな捜査に着手しています。
6月5日、国会で尹前大統領による「非常戒厳」宣布や尹氏の妻・金建希(キム・ゴンヒ)夫人の不正疑惑に対し、検察などに代わり、与党などが推薦する「特別検察官」に捜査させる法案を賛成多数で可決しました。
法案内容は、特別検察官が今回の戒厳令宣布に関して、首謀者に死刑または無期刑を科す内乱事件として捜査すると規定されており、金夫人による株価操作や国政介入など16件の不正疑惑も捜査対象にしています。
これまでも、「共に民主党」が議席の過半数を占める国会は、尹前政権当時から同様の法案を複数回可決したのですが、尹氏が拒否権を発動して成立を阻んできたのです。
さらに同日、国会は検事に対する懲戒請求を、検事総長に加えて法相も行えるようにする改正案を可決しました。
野党となった「国民の力」は、採決に先立ち「(複数の事件で起訴された)李大統領を捜査した検事を懲戒し、仕事を遂行不能にする報復法案だ」と強く批判しています。「対立と分断の解消」(李氏の演説)どころではありません。真逆です。
日韓関係に係る新たな懸念材料が出てきました。
李氏は公約に、慰安婦問題に関する記録を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録することを目指すと明記したのです。
慰安婦問題に関する研究や戦時の女性人権問題について国際的連帯を進めるための財団の設立も掲げました。2015年の日韓合意の趣旨に反しかねない動きです。
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