世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

日鉄(日本製鉄)のUSスチール「買収」の行方

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、5月26日から61日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ドイツ首相のウクライナ供与の長射程兵器でのロシア攻撃容認方針に、「危険な決定」とロシア猛反発(526日)。マスク氏、トランプ政権役職を退任(28日)。「イスラエルが停戦案に合意」と米政府が発表、焦点はハマスの動向(29日)。安倍昭恵氏、プーチン大統領と面会(29日)。中国が主導し国際調停院を香港に設立(30日)。トランプ大統領、ペンシルベニア・USスチール工場で演説(30日)。米国防長官「中国の脅威は本物」、台湾統一念頭に強い危機感示す(31日)。ウクライナ、複数のロシア空軍基地をドローン攻撃で軍用機40機以上損傷(61日)、などです。

 「鉄は国家なり」です。鉄の生産量が国の経済力や国力を表す重要な指標であることを意味する言葉です。19世紀にプロイセン王国首相、北ドイツ連邦首相、ドイツ帝国宰相を歴任したビスマルクの言葉だといわれています。

 USスールはかつて世界首位の粗鋼生産量を誇りましたが、その後の世界競争で後手に回り、2023年時点で世界24位まで後退しています。米国で工場が立地する一帯も「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれています。

 現在首位は中国で、粗鋼生産量で中国は米国の12倍といわれています。これでは中国に勝てません。

 トランプ政権の諸政策は、そのほとんどは中国をにらんでいます。日鉄とUSールの提携の在り方を巡る議論の中心も中国であることを理解する必要があるでしょう。

 トランプ米大統領は523日、両社の「計画的なパートナーシップ(提携)」を承認する意向を表明したため、複数の米主要メディアが「トランプ氏が買収を承認した」と報じたのです。

 ところが25日、米ニュージャージー州の空港で日鉄によるUSールの買収計画について記者団に語ったトランプ氏は、「完全子会社化を認めない」可能性を示唆しました。
 「これは投資であり、(日鉄の)部分的な所有となるが、米国が支配することになる」と語ったのです。

 そしてトランプ氏は30日、東部ペンシルベニア州ウェストミフリンにあるUSールの工場で演説しました。
 最初に語ったのは、鉄鋼製品に課す追加関税を現行の25%から50%に引き上げるという方針の発表でした。

 さらに、日鉄とUSールの「パートナーシップ」を歓迎し、日鉄による140億ドル(約2兆円)の投資は「米国の鉄鋼史上最大のものになるだろう」と語ったのです。

 この演説で、「25%では(海外企業が米国に輸出する際に)乗り越えることができるが、50%では乗り越えることができない」と述べ、中国からの鉄鋼輸入を暗示する内容となっています。実施を64日としています。

 トランプ氏は演説で、日鉄とUSールの提携について「われわれは素晴らしいパートナーを得ることとなる」と述べ、改めて支持を表明しましたが、日鉄によるUSール買収計画の再審査の結果には言及しませんでした。そして集会後、記者団には日鉄とはまだ最終合意していないと明らかにしたのです。

 最も重要なことは「米国が支配し続けることだ」とトランプ氏は強調しています。日鉄に関する大きな懸念は中国問題であるといえるのです。

 複数の関係者によれば米政府と日鉄は米国の国家安全保障に関わる協定を結ぶ方向で検討しているといいます。
 報道では65日が最終判断の期限とされています。



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