2025.06.08 22:00
ダーウィニズムを超えて 114
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第九章 科学時代の新しい神観
(一)科学時代における神の再発見
(2)神なき思想の台頭
ギリシャ神話の中に、ゼウスの神に反抗した巨人プロメテウスの物語がある。プロメテウスは、神の火を盗んで人間に与え、神々に支配されている悲惨な人間を解放しようとした。プロメテウスは、神に反抗し、自らの力で生きようとする人間の理想像となった。
近代に至り、再びプロメテウスの精神が蘇(よみがえ)ってきた。17世紀にホッブスとともに近代の無神論が始まり、18世紀には、啓蒙思想により伝統的な神概念が挑戦を受けて、神への信仰は揺らぎ始めた。19世紀に至ると、マルクスが唯物弁証法に基づいた共産主義をかざして神に最終的な戦いを挑んできた。彼は学位論文の中で「端的に言えば、すべての神々を私は憎む」というプロメテウスの告白を掲げて、自ら19世紀のプロメテウスたらんという決意を明らかにした。
神による創造論に反旗をひるがえし、生物は生存競争の中で、自然選択によって進化したものであると主張したダーウィンも、プロメテウス精神の強力な推進者であった。何かに導かれたように、マルクスとダーウィンはほとんど同じ時に歴史に登場した。そして、彼らからおよそ半世紀遅れて、フロイトが「人間は性的なエネルギーに操られている」という生理学的な無神論を展開した。彼もまたプロメテウス精神をさらに推し進めたのであった。
1957年10月4日、ソ連で人類最初の人工衛星スプートニクが打ち上げられた。その時、共産主義者たちは「天上に神は存在しなかった」と宣伝した。そして1967年のソ連共産党の新綱領は、「1980年までに宗教の最終的な形跡までも根絶する」と言い切ったのである。
このような無神論の攻撃の中で、神学はどんどん力を失ってゆき、1960年代に至り、神学界は急激な失墜を迎えた。その結果、神学者のランドン・ギルキー(Langdon Gilky)が述べているように、「神学にとって語るべき神は果たして存在しているのか?(*2)」、「神について語ること、それがいったい何の意味をもつのか?(*3)」とまで問われるようになり、神学界は放心状態に陥ったのである。
しかし今日、プロメテウス精神——神への反抗——は急速にその力を失っていった。ソ連と東欧における共産主義の崩壊がその象徴であった。科学的真理であるかのように装って登場し、世界を制覇したかのように見えるダーウィニズムも、ID理論や本書で紹介した統一思想の新創造論などで大きく揺らぎ始めている。伝統的な道徳を否定する、フロイト主義から生まれた性解放理論は猛威を振るい、人々を淪落(りんらく)の淵へと追いやった。しかしエイズの蔓延(まんえん)、家庭の崩壊に象徴されるように、それは人間を解放するものでなく、破滅へと導くものであることが明らかになった。そしてその嵐は今、過ぎ去ろうとしているのである。
*2 ブランドン、コリンズ、ギルキー、清水哲郎・掛川富康訳『神の観念史』平凡社、1987年、145頁。
*3 同上、175頁。
---
次回は、「無神論を超えて① 現代の宇宙論から見て」をお届けします。