2025.06.05 12:00
ほぼ5分で読める勝共理論 80
スパイ防止法⑧
李春光事件
編集部編
中国のスパイとして日本にやって来た
今回の事件は、なんと中国の外交官のトップが実はスパイだった、という事件です。
李春光は、在日中国大使館の一等書記官でした。つまり、中国の外交官のトップだったということです。しかしそれだけではありません。
彼は中国軍の軍人でもありました。所属は「中国人民解放軍総参謀部第二部」、つまり中国軍専属のスパイ機関です。
どういうことかというと、彼は外交官として日本にやって来たのではなく、中国軍の軍人として、中国のスパイとして日本にやって来たということです。肩書として、中国の外交官を名乗っていたということです。
どうしてそのようなことをしたのかというと、外交官であれば、日本の警察が逮捕できないからです。これを「外交特権」とか「不逮捕特権」といいます。
李春光は中国軍傘下の大学を卒業しました。詳しいことは分かっていませんが、外国の無線を傍受する要員を育成するための学校だといわれています。
日本語を習得して、何度も日本に来ていました。日本語がとても上手で、日本人と間違えるほどだったそうです。肩書は時と場所によって別だったといいます。
彼は2007年に外交官の肩書で日本にやってきました。そして通商部門を担当しました。
当時の日本は、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に参加しようとしていて、中国がこれに反対していました。
それで彼は多くの日本の国会議員に会って、日本がTPP協定に参加しないよう説得していました。
「日本がTPP協定に参加しなければ、中国軍の力を使って日本に有利な仕組みをつくってあげられる。レアアースの輸出も保障できる。食糧危機の場合に100万トンの米を輸出できる」
そんなことを話していました。
国家ぐるみでスパイ活動
彼の妻も日本の要人と何度も会っていました。どうやら夫婦そろってスパイだったようです。あるいは、二人の男女のスパイが夫婦を名乗っていただけなのかもしれません。
いずれにせよ、彼は日本の中で外交官としての肩書を持って、自由に活動していました。
そんな中、ある海上自衛官が潜水艦技術を中国に漏らしていたということが分かりました。
その事件については、漏らした情報のレベルが低かったので犯罪にはなりませんでしたが、その途中で李春光が日本の防衛関係者と人脈を築いていたことが分かりました。
捜査をしてみると、実は彼が軍人であって、さまざまなスパイ活動をしていることが分かってきました。
ところが彼の肩書は外交官なので、日本の法律で捕まえることができません。それで困っていると、彼が日本で商業活動をしていることが分かりました。もうかったお金はスパイ活動に使われていました。
外交官がその国で商業活動をすることは、ウィーン条約で禁じられています。それで、日本の法律ではなく、ウィーン条約に反しているという理由で警察への出頭を要請したのです。
要請を受けた李春光は、その後、1週間ほどして中国に帰国してしまいました。
警察としてはそれ以上、何もできません。中国側は彼が帰国した理由として、ちょうど任期が終わったからだと説明しました。「彼は中国軍の軍人ではない、中国軍に所属したことは一度もない」と表明しました。もちろん、どちらもうそでしょう。
高級外交官がスパイだったということは、中国が国家ぐるみでスパイ活動を行っているということです。
そんな国が日本のすぐ隣に存在するということなのです。
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