2025.05.22 12:00
ほぼ5分で読める勝共理論 78
スパイ防止法⑥
上海総領事館員自殺事件
編集部編
事件は「かぐや姫」から始まった
上海総領事館員自殺事件について解説します。
どんな事件かというと、中国で勤務していた日本人の公務員Aさんが中国でスパイ活動をせざるを得なくなって、最終的には良心の呵責(かしゃく)で自殺してしまったという事件です。
今から20年ほど前、2004年に起こった事件です。
Aさんは46歳の男性で、日本の公務員の中でも重要な機密を扱う仕事をしていました。そしてAさんは結婚していたのですが、ある中国人女性Bと付き合っていました。
中国人女性Bは、「かぐや姫」という名前の日本人向けカラオケクラブの店員でした。そのお店でAさんはBと知り合って不倫を始めたということです。おそらく単身赴任だったのでしょう。
そしてBは、ある時ほかの男性を相手に売春をしていたことが分かって逮捕されました。警察がBを調べていると、Aさんと不倫していることが分かりました。
それで中国の情報当局がこれをネタにしてBさんと接触を始めました。
接触したのは唐さん、陸さんという名前の中国人です。唐さんは公安隊長だと名乗りました。
そんなある時、Aさんの家に手紙が送られてきました。
中身を見ると、唐さんと同じ組織の人間からの手紙でした。そして「公衆電話を使って連絡してほしい」「時間は金曜か日曜の夜7時から8時の間だけだ」と書いてありました。
Aさんは唐さんにこのことを相談しました。すると2週間たって、手紙を出した男は逮捕されたと言ってきました。
ハニートラップ
実は、この話は全て作り話でした。あたかも唐さんがAさんを救ってあげた、Aさんに恩を売ったような話にして、情報を得ようとしたのです。
なかなかAさんが秘密をしゃべってくれないので、Aさんをだましたということなのです。
そしてそれから唐さんは態度を急変させました。
「機密情報を話せ、このまま黙っていると国と国との問題になるぞ。おまえは仕事を失って、家族も路頭に迷うことになる。それでいいのか」
そう強く言われて、Aさんは情報を渡す約束をしてしまいました。
Aさんはこう考えました。
「恐喝は今回だけでは終わらない。次々とエスカレートするだろう」
「日本は国外の大使館と連絡をするときに暗号を使っている。その暗号を教えろと言ってくるはずだ」
「そうすると日本の情報が全て中国側に筒抜けになってしまう。これでは日本は中国にやられてしまう。そんなことになったらおしまいだ」
それでAさんは、遺書を書いて領事館の宿直室で自殺しました。
遺書にはこう書いてありました。
「国を売って一生あの中国人たちに苦しめられることを考えると、こういう形しかありませんでした」
「日本を売らない限り私は出国できそうにありませんので、この道を選びました」
日本政府はこのことを知って、中国に対して強く抗議しました。
しかし「遺族に配慮するため」という理由で、事件は一切公表されませんでした。
そして事件から2年がたち、マスコミが遺族から事件を聞いて記事として発表しました。それでやっと社会的な大問題になったのです。
当時、中国側は、Aさんが自殺したのは仕事のストレスのせいだと言い張りました。
実はこの同じ年に、日本の自衛官が機密情報を無断で持ち出して、中国に何度も行っていたということが判明しました。
その男性も「かぐや姫」に通っていました。そして取り調べを受けている途中で、イージス艦の中で自殺してしまいました。
この男性もハニートラップに引っかかったのでしょう。
日本以外の国ではスパイ行為が頻繁に行われています。しかもあらゆる手段が使われます。
やはり、「日本にもスパイ防止法が必要なんだ」ということです。
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