スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』5

小出浩久・著

(光言社・刊『“人さらい”からの脱出 違法監禁に二年間耐え抜いた医師の証言』〈2023年11月20日改訂版第2刷発行〉より)

 スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
 2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。

 今回は、前回の続きからお届けします。

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1 15カ月間の監禁生活

一、統一教会への入信

 天理教時代の神秘体験は、その神様の心を私が個人として感じる体験だった。

 この偉大な真理を皆に伝えたいと感じ、11月には進んで統一教会の先輩とともに熱心に宇都宮市の路傍で、伝道をし始めていた。

 一方、宗教活動にあけくれる私の姿を見て、先輩のS氏は私にこう言ったものだった。

 「おれは統一教会に小出をとられたんだ。小出が統一教会の信仰を続ける限り、おれも統一教会とかかわり続ける」

 S氏は統一教会関連の批判的な情報を集めては、両親の元に送り続けた。誰も相談相手のいなかった両親にとっては、私と出身高校も同じであり、しかも自分の子供のことでいろいろと気遣ってくれるS氏を信頼し、頼るようになっていったのも無理からぬことかもしれない。

 両親は、S氏が提供する情報や統一教会に関する説明を信じ込み、不安にかられていった。その情報のほとんどは統一教会に反対し、敵意をもつ人々が流しているものであった。

 悪いことに、私自身のとった当時の行動が、批判的情報が“事実”であるかのような印象を、両親に深く植え付けてしまった。

 統一教会に悪意と敵意をもつ人たちは、統一教会に子供たちが入ると「学業成績が落ちる」「親元へあまり帰らなくなる」「街頭で熱狂的な伝道活動をする」などと宣伝してきた。

 確かに、統一原理を信じた人(特に青年)はその教えの内容に感動し、積極的に教会活動に参加するようになってしまう。自分の時間の大半を布教活動に割くようになってしまう。このために、批判する人たちが指摘するような現実を引き起こしてしまうこともないわけではない。本当は、深く、神そして信仰の先輩との交流をもって人生の考察をすべき時期だった。もっと積極的に、神にも先輩にも“導き”を求めるべきであった。日本の宗教団体において個別性をもった指導が不足してしまうという課題がある。組織的活動に重点がおかれがちなのである。

 そうした状況を目の当たりにした親や兄弟、親族は、大方の場合、統一教会に恨みを抱いてしまうのだった。

(続く)

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 次回は、「統一教会への入信④」をお届けします。



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