2025.05.07 22:00
スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』4
小出浩久・著
スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。
今回は、前回の続きからお届けします。
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第1章 15カ月間の監禁生活
一、統一教会への入信②
実はこのときは参加したほうが良いかどうか相当迷った末の参加であった。
しかし、その4日間が、大学に入る前後から悩み続けていた、科学と宗教の両立という問題に光を与えてくれたのである。
医学への道を志す前から、自然科学、とりわけ物理学には関心があった。自然現象の多くが数式によって表現されることは私にとってとても興味深く、もっと深く学びたいと常々考えていた。
ところが大学に入って受けた物理学の最初の講義は、私にとってちょっとショッキングだった。
ノーベル賞候補とも噂(うわさ)されたことのあるA教授は、その講義での最後で「この世の中のすべてのことが一つの数式から導き出されるようにしたい。たとえば、人間の指が5本あるのも、その数式によって証明されるようにしたい」と語ったのである。
自然科学を学んでいるものとしては、この上なく魅力的な話に感じられた。しかし、天理教を信仰しているときに、創造神の愛情を日常生活の中での様々な体験の積み重ねによって知っている者としては、その言葉は受け入れ難く、恐ろしい考え方のように感じられた。
私たちの生きている世界は数学だけによって支配される(規定される)冷たい世界なのか? この問いかけは、ずっと私の心の奥底に残った。
大学の教養課程では様々なことを学んだ。オパーリン(*2)の生命の起源、ダーウィンの進化論、エントロピーの増大の法則、量子力学、心理学etc。そのどれを懸命に勉強しても、心の中の「不安」ともいえる問いかけへの答えは得られなかった。
ところが、である。4日間のセミナーで学んだ統一原理の「創造原理」は、私に明確な考え方を提示してくれた。創造主は原理原則に基づいてこの世界を創造されたが、それは「“ともに”喜びたい」からであった。一つ一つの法則の背後には、自然界の美によって、人間を「喜ばせたい」という創造主の愛情がある。神の中では法則と情緒とは矛盾なく一つになっているというのが、創造原理の主張だった。
同時に、数学的に解こうとすると難解なこの世界が、結果としては、愛と美に満ちあふれた世界であったことに気づかされたのである。
かつてアインシュタインが「世界について永遠に理解不可能なことは、世界が理解可能であるということである」と言ったが、それは創造主が、我が子人間を喜ばせたくて、この世界を“その対象”としてつくられたからであった。
(続く)
*2 ソ連の生化学者。「地球上の生命の発生の過程は、完全に物理的・化学的法則によって決定されたものであるとする説」を提起した。
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次回は、「統一教会への入信③」をお届けします。