2025.05.11 22:00
ダーウィニズムを超えて 110
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第八章 宇宙の統一原理に向けて
(五)人間原理、万物理論、新しい統一原理
(7)神による創造か
アレックス・ビレンケンは「自然定数がこのようにうまく調整されていることをどう考えればよいのでしょうか? それは生命と知性が存在できるように定数を入念に調節した神を示しているのでしょうか?(*69)」と言う。
そしてビレンケンは「宇宙の法則が数学的な方程式の形で表現されるのであれば、精神が宇宙に先行する」のであろうかと、問うている。
無からの量子トンネル効果という描像は、もうひとつの興味をそそる問いを投げかけます。トンネル効果の過程は、宇宙のその後の進化を定めるのと同じ基本的な法則によって支配されています。つまりその法則は、宇宙それ自身にすら先立って、「そこに」あったのだということになります。これは、その法則は実在についての単なる記述でなくて、それ自身独立した存在である、ということを意味しているのでしょうか? 空間も、時間も、物質も存在していないのに、どんなタブレットにそれらは書き込まれていたのでしょうか? 法則は数学的な方程式の形で表現されます。もしも数学の媒体が精神だとすると、これは精神が宇宙に先行するということなのでしょうか? これは、未知の大きな謎の深淵に私たちを導きます。私たちがいつかこの深淵を越えることができると想像するのは困難です(*70)。(太字は引用者)
[著名な進化論者ドーキンスの友人である]ワインバーグ(Steven Weinberg)は「宇宙が理解可能なものに見えてくるほど、無意味なものにも思えてくる」と言った。しかしミチオ・カクは、「はるかに多くの宇宙論者は、はっきりとは言わなくても、ワインバーグが間違っていて、宇宙には意味があると考えている。……また、何人かは、宇宙の意味を神のしわざというところに見出した(*71)」と言い、そのような宇宙論者を紹介している。
アルバータ大学のドン・ペイジ(Don Page)は言っている。「はい、きっと目的があるんじゃないでしょうか。全部の目的まではわかりませんが、ひとつは神が自分に力を貸してくれる人間を生み出すことだったと思います。さらに大きな目的として、神の創造物に神を賛美させるということもあったかもしれません(*72)」(ゴシックは引用者)。ペイジは、量子物理学の抽象的な法則にも神のしわざを見出している。「ある意味で、こうした物理法則は、神が使うことにした文法や言語に近いように思えます(*73)」。
メリーランド大学のチャールズ・ミスナー(Charles Misner)は、アインシュタインの一般相対性理論をいち早く分析したひとりだが、ペイジと同じ見解をとっている。「宗教では、神の実在や人類愛といったものが非常に重要な問題となっているように思います。これらの重大な真理は、いつの日かひょっとしたら別の言葉で、しかも違うスケールで、捉えられるようになるのではないでしょうか。……だからそこに本当の真理があるように思えますし、その点で壮大な宇宙には意味があり、われわれは創造主に尊敬と畏怖を感じるのです(*74)」(太字は引用者)。そしてミチオ・カクは宇宙の背後に音楽家を認めざるを得ないと言う。
ひも理論によって、素粒子は振動するひもの奏でる音と見ることができる。化学法則はこれらのひもで演奏できるメロディーにあたり、物理法則はひもを支配する和音の法則(和声法)に対応する。宇宙はひもの交響楽で、神の心は超空間に響きわたる宇宙の音楽だ。このたとえが妥当なら、次に「作曲家はいるのか?」と問わなければならない(*75)。(太字は引用者)
*69 アレックス・ビレンケン、村田陽子訳『多世界宇宙の探検』日経BP社、2007年、221頁。
*70 同上、349頁。
*71 ミチオ・カク、斉藤隆央訳『パラレルワールド』NHK出版、2006年、421頁。
*72 同上、422頁。
*73 同上。
*74 同上。
*75 同上、422~423頁。
---
次回は、「統一思想の見解」をお届けします。