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ダーウィニズムを超えて 109

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(五)人間原理、万物理論、新しい統一原理

(6)万物理論を目指す困難
 ミチオ・カクは、万物理論を目指しているひも理論が直面する困難な問題について次のように語っている。

 1984年に火がついたひも理論の人気は、ずっとは続かなかった。1990年代の半ばを迎えるころには、超ひもブームは物理学者のあいだで衰えを見せつつあった。ひも理論が提起する簡単な問題は解決され、あとには難しい問題だけが残っていたのだ。そうした問題のひとつが、ひもの方程式に無数の解が見つかるということだった。……物理学者は、ひもの解のあまりの多さに圧倒された。しかもなんと、その解の多くがわれわれの宇宙と非常によく似ていたのだ。カラビーヤウ空間をうまく選択すれば、比較的簡単に標準模型のおおまかな性質を再現できた。風変わりなクォークやレプトン、さらには不可解な重複までも。だが、19のパラメータが特定の値をもち、粒子に三つの世代があるような、厳密に標準模型と一致する解を見つけるのは、きわめて難しい(今なお挑戦が続いている)。……ほかにもまだ厄介な問題があった。なかでも大きな問題のひとつが、矛盾のないひも理論が五つあるということだった。宇宙が5種類もの統一場理論を許すとはとうてい考えられなかった。アインシユタインは、神には宇宙の創造にあたって選択の余地がなかったと考えた。ならば、神が五つも宇宙を創ったはずがないのではなかろうか(*67)。(太字は引用者)

 ブライアン・グリーンは素粒子物理学の標準モデルの困難さを次のように言う。

 なぜ物質の族が三つなのか? なぜそれぞれの族には、表にリストした粒子が含まれるのか? なぜ族は二つだったり、一つだったりしないのか? なぜ電子の電荷はダウン・クォークの電荷の3倍なのか? なぜミュー粒子はアップ・クォークの23.4倍の質量をもち、トップ・クォークは電子の35万倍の質量をもつのか? なぜ宇宙はこれほど多様な、ランダムとしか思えない数によって構築されているのか? 標準モデルは、……粒子たちの相互作用をみごとな精度で予測する。しかしこのモデルは、その入力情報(粒子とその性質)が、なぜそういうものになっているのかを説明できないのである。それはちょうど、電卓に入力された数値は、電卓には説明できないのと同じことだ(*68)。


*67 ミチオ・カク、斉藤隆央訳『パラレルワールド』NHK出版、2006年、250251頁。
*68 ブライアン・グリーン、青木薫訳『宇宙を織りなすもの・下』三陽社、2009年、167

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 次回は、「神による創造か」をお届けします。


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