2025.05.08 22:00
「メディア」を考える 4
『グラフ新天地』2003年6月号に掲載された特集記事を、編集部が再編集してお届けします。
家庭倫理、道徳性を高める言論に
家庭崩壊、性的退廃、社会腐敗との闘い
言論人である前に一人の「道徳的人間」に
冷戦後、世界的に表面化した課題が、家庭の崩壊、家庭の価値を破壊する不倫や離婚、性犯罪や青少年非行の急増、精神的退廃、麻薬、エイズ、自殺といった問題です。これらの背景には、自由化に伴って、唯物主義、個人主義的な思想がまん延していったことがありますが、大衆に情報を伝達するメディアにも、その道徳的責任が問われています。
人間は本性的に自由を求め、創造的な活動を行うことができます。しかし一方では、自由には「責任」が伴うことも事実です。同様にメディアにも、報道の自由に伴う責任が問われているのです。
メディアを扱う言論人も、その職業的立場の前に、まず一人の「人間」です。そのため、その人自身がまず道徳的、倫理的、社会的に正しい存在でなければなりません。そのような内容がなくて、人々の良心を啓発したり、社会を正しい方向にリードしたりすることはできません。メディアが「社会の良心」として、暴力やポルノ情報の氾濫、社会腐敗と闘うことが求められています。
民主主義は、報道の自由なくして機能しませんが、報道の自由は、道徳的責任と共に行使されなければ真の自由となることができません。自由な報道には、道徳的な報道となることが求められているのです。
ところが今、メディアに対する信頼と評価が低下しています。メディアに携わる人間が非道徳的、非倫理的な不祥事を起こすことは論外ですが、メディアが無責任かつ扇動的になることで、視聴者の信頼性を失っていきます。
またメディアが商業主義の道具となっていくことで、唯物的価値観を社会にまき散らすことになります。そうなると良識ある人々は、メディアの背後にある利己的な動機、独善性、傲慢(ごうまん)に気付くようになり、メディアを信頼しなくなっていきます。それでは報道の自由を正しく行使できないばかりか、やがてはその自由さえも失うことになりかねません。
本来メディアには、家庭や社会的な道徳観、倫理観を高め、社会の秩序を正すべき役割があります。しかし言論の自由を誤って行使すると、人々を精神的荒廃に導き、社会を腐敗へと陥れる道具になりかねないことになります。
東西冷戦の平和的終結に貢献
冷戦後の世界に「家庭の重要性」を強調
1982年5月、文鮮明(ムン・ソンミョン)先生の提唱により、米紙「ワシントン・タイムズ」は、米国首都ワシントンDCの保守系新聞として創刊されました。同紙は、後に国際共産主義解放の決定打となった当時のレーガン政権の「SDI(戦略防衛構想)」を強力に推進しました。
これにより、当時、圧倒的優位に立っていたソ連の核ミサイルの無力化を図ることで、軍事力による世界共産化の野望をうち砕くことが可能となりました。そして、経済的に破綻状態にあったソ連の共産主義体制の崩壊、ひいては東西冷戦の平和的終結へとつながっていったのです。
しかし、米国は冷戦に勝利することができたものの、国内的には、フリーセックスやホモセクシャルのような性道徳の乱れ、家庭の崩壊、離婚率の急増、青少年の麻薬や暴力、自殺、エイズといった社会問題に悩まされていました。これは米国のみならず、世界的な問題として広がっていきました。
そのような米国と世界を建て直すため、ワシントン・タイムズが、冷戦後の10年の目標として取り組んできたテーマが家庭再建のために「家庭の重要性」を強調することであり、「道徳社会具現に貢献する言論になれ」という内容でした。
このテーマは、創設者の文先生が提案されたものであり、真の家庭の回復と道徳の再建を世界的に求めることで世界平和の実現に寄与することでした。ワシントン・タイムズは、家庭、信仰といった道徳的な問題を一面で定期的に取り上げるなど、米国の精神革命の旗手として「家庭の価値」の見直しに取り組んできました。
また、このテーマは冷戦後の「世界言論人会議」(WMC)でも取り上げられ、全世界の言論人に求められるテーマともなっているのです。
ワシントン・タイムズは2002年、創刊20周年を迎え、それを記念して開かれた祝賀晩餐会では、ブッシュ大統領からの祝賀メッセージが紹介されるなど、保守系新聞としてブッシュ政権に重要な影響を与えました。
ワシントン・タイムズ紙創刊20周年記念晩餐会
ブッシュ米大統領の祝辞
(ホワイトハウスのティム・ゲーリング補佐官が代読、2002年5月21日)
ワシントン・タイムズ紙が1982年に創刊されて以来、米国民と世界中の人々はワシントン・タイムズ紙を頼りにしてきました。注目すべき情報の主要な源として、またその時々の問題についての議論の場を提供することで、同紙は社会がより良い情報を得る重要な役割を果たしてきました。私はワシントン・タイムズ紙を米国における主要な日刊紙とするために日々努力してこられた一人ひとりの業績を心から称えるものです。皆さまが優れた報道を行おうと絶えず努力してこられたことは、ジャーナリズムの信頼性を高めています。
---
次回は、「『一つの世界』へ先導する言論に」をお届けします。