「メディア」を考える 5

 『グラフ新天地』2003年6月号に掲載された特集記事を、編集部が再編集してお届けします。

「一つの世界」へ先導する言論に
人類の精神性向上に貢献すべき情報化時代

「地球村」の視点で社会的教育を

 21世紀に入り、急速に発展している交通と情報技術(IT)は、外的には世界を一つの「地球村」として実感させるものとなりつつあります。特に通信においてはインターネットと通信技術の発達により、一部の地域におけるニュースが瞬時に世界を駆け巡り、人類全体で一つの情報を共有することが可能となってきました。

 しかし情報の高速化により、「より尊敬される人間になった」とか「より健全な世界になった」というわけではありません。事実、先進国内でも今なお、隣接する人間同士が、人種や言語、文化、宗教、慣習、価値観の違いから熾烈(しれつ)な争いや葛藤を繰り返し、新たな不幸を生み出している現実があります。またアフリカなど第三世界を中心に、年間に数千万の人間が病気と飢餓で死亡するという現実がありながら、ほとんど無策のまま放置されており、地球村と呼ぶにはほど遠い世界となっています。

 今求められているのは、全世界が一つの共同体であることを認識し、人類が神(創造主)のもとで一つの家族であるという共通の価値観と、互いに尊重し、相手のために生きようとする高い精神性(真の愛)を人類的に共有することです。

 文鮮明(ムン・ソンミョン)先生は、世界化時代における言論は、「機能言論」から「価値言論」に方向付けることを提案しています。すなわち言論の役割は、「ニュースを事実どおりに視聴者に報道することだけをもってその使命を全うするのではなく、論評と批判を通じて視聴者に真実を悟らせて、社会の精神性・道徳的価値を高揚して善導しなければならない」というものです。

 すなわち今日の情報化時代においては、一つの出来事を「事実どおり報道する」という初歩的な機能言論から、その事実を「いかに解釈し、評価し、いかなる方向に導くか」が言論の重要な使命になるといいます。この時にメディアに携わる人々が、単に商業主義的な動機で低級な欲望や趣向に迎合するのではなく、人類と世界全体の平和と繁栄に寄与する立場に立った価値観と視点を持つことが求められています。そのための原点となるのが、家庭の価値を守り、発展させることのできる道を探し出すことです。言論には、それを広く社会的に教育していく役割があります。

メディアに対する文鮮明先生のメッセージ
社会を善導するメディアに

これからは価値を伝える時代
 言論人は、これまで最も価値あることが何であるか、そして世界平和を実現するのに最も良い方法が何であるかに対し、いつも真実を伝え、人類を啓発し導くのに勇気を見せてきました。未来は、絶対、唯一、永遠不変なる人間の尊厳性が花咲き、世界平和につながる真なる家庭を実現する時代にならなければならないと信じます。

 度を越した商業化は、人間の尊厳性に否定的な影響を及ぼすだけでなく、神様を求める信仰生活の余裕さえ奪ってしまうことでしょう。言論媒体は道徳的基準を同時に強調するとは言いますが、実際には、価値観とは関係のない利潤追求にのみ没頭するようになる危険性があります。

 不幸にも、私たちが置かれている今日の社会的、文化的環境は、道徳的に退廃の一路にあって、家庭の貴さが破壊され、人類社会を苦痛と絶望の沼に追い詰めています。…言論が道徳的な価値を尊重しないとすれば、若者たちは自滅の道から逃れることはできません。

 家庭とは、愛を学ぶ最初の、そして最高の学校です。家庭こそ理想社会と世界平和の礎です。ですから、真なる家庭の価値は、言論によって保護され、尊重されなければならないのです。

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 「『メディア』を考える」は、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。