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~情報分析者の視点~

台湾の統一地方選挙で与党民進党惨敗、蔡氏再選に暗雲

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 11月19日から25日までを振り返ります。

 この間、次のような出来事がありました。
 カルロス・ゴーン会長逮捕(11月19日)。韓国、日韓慰安婦合意に基づく「和解・癒やし財団」解散を発表(21日)。台湾、統一地方選挙。与党民進党が惨敗し、蔡英文主席辞意を表明(24日)、などがありました。

 今回は、台湾の統一地方選挙について説明します。
 11月24日の投開票の結果、与党民進党は「大敗」しました。台湾では敗北した政党の主席の辞任が恒例となっており、蔡英文総統は民進党主席を辞任しました。

 民進党候補者が獲得した総得票数は約480万票、野党国民党が獲得したのは約600万票で120万票の差がつきました。4年前の統一地方選では民進党が大勝しましたが、国民党との差は約80万票でしたから、今回の結果は「惨敗」だったのです。
 全22県・市の首長ポストのうち現有13から6に半減。さらに6直轄市も4から2に減らしました。野党国民党は6から15に躍進。国民党は政権交代の足掛かりを得たと言えるでしょう。

 中国はこの結果を受け、今後、硬軟合わせた「統一」攻勢が強化されることは確実です。中国国務院の台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、選挙結果について触れ、「中台関係の平和的発展の『配当』を引き続き分かち合い、経済・民主を改善したい台湾の民衆の強い願いの表れ」と歓迎しました。

 民進党敗北の原因を見てみます。①政権成立当初から困難な構造改革を断行したこと。年金改革で受領額が減る軍人、公務員、教員の反発が強かった。②中国を刺激しない現状維持政策が独立派から物足りないとの突き上げが強くなる一方、中国との関係悪化によるビジネスチャンスを失った業界は政権を批判。中国からの旅行客の激減や農水産物の買い付け禁止が行われ、影響が広がった、などが挙げられます。

 同時に住民投票が行われました。蔡政権の政策の是非を問う内容になっていますが、前回の総統選挙で掲げられた「脱原発」や「同性婚合法化容認」などがみな否定されました。

 今後、民進、国民両党は2020年の総統選に向かって動き出します。蔡英文総統の再選に暗雲が立ち込めていることは確かですが、行った構造改革、税制改革の成果がこれから表れてきます。また対中国政策としての米国の協力もあるでしょう。

 一方、勝利した国民党の呉敦義主席は長老として政治経験はありますが、国民的人気はありません。総統選候補者での混乱が予想されます。かつて江沢民元主席は「2020年までには台湾統一」と強調していました。

 目が離せない状況が続きます。