スマホで立ち読み Vol.36
『こども礼拝』12

林三男・著

(光言社・刊『こども礼拝 親と子のための説教集』〈200549日初版発行より)

 スマホで立ち読み第36弾、『こども礼拝』を毎週日曜日(予定)にお届けします。
 「光の子園」での礼拝説教をまとめた、幼児から小学生低学年向きの説教集です。小学生礼拝のテキストとしても最適です!

※本文中の呼称・用語は、全て掲載当時の名称です。

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11. 夢を解いたヨセフ

〈ポイント〉
①ヨセフは、神様がいつも共にあることを信じて、すべてのことを勝利していった。
②ヨセフは、神様の力によって夢を解いた。
③悪に対して、真(まこと)の愛で許していったヨセフであった。

〈聖書:創世記第37章~47章参照〉

ヨセフ、エジプトに売られていく
 今日は、「夢を解いたヨセフ」のお話をしましょう。ヤコブには、12人の子供がいました。中でも、ヤコブは11番めのヨセフを非常に愛しました。ヨセフには、特別に長そでの着物を作って与えたほどです。それを見たお兄さんたちは、「ヨセフだけ良い物をもらって、ずるいなあ、うらやましいなあ」と思い、ヨセフを妬(ねた)ましく思いました。

 ある日、ヨセフは夢を見ました。「お兄さんたちの麦の束(たば)が、わたしの束を拝みました」という夢と、「日と月と11の星がわたしを拝みました」という夢でした。それは、ヨセフが王様になり、お兄さんやお父さんたちがヨセフに頭を下げるということでした。それを聞いたお兄さんたちは怒って、何とかしてヨセフを懲(こ)らしめてやろうと思いました。しかし、お父さんのヤコブはその言葉を心にとめました。

 ある日のこと、ヨセフが羊を飼っているお兄さんたちを捜しに行った時、お兄さんたちは、「ヨセフを殺そう」と相談していました。それで、穴の中にヨセフを投げ込みました。ちょうどその時、ミデアンびとの商人たちがエジプトに行く途中に通りかかりました。そこで、ヨセフを殺すのをやめて、奴隷として売りました。ヨセフは、思いがけないお兄さんたちの意地悪にとても悲しみました。愛するお父さんのいるふるさとを離れて見知らぬ所へ行かなければならないのです。どんなに寂しく、悲しかったことでしょう。それでもヨセフは神様を愛し、信じていました。どんな時も神様が共にいてくださることをヨセフは信じ、エジプトの地に行ったのでした。

▲ミデアンびとの商人に売り渡されるヨセフ

 一方、お兄さんたちは、ヨセフの着物に山羊の血を付けて、悪い獣が食べたように見せかけ、それをお父さんのヤコブに見せました。ヤコブは、ヨセフが死んでしまったと思い、深く悲しみました。

 さて、エジプトに売られていったヨセフは、パロの役人ポテパルの家で働くようになりました。ヨセフは、神様が共に居てくださることを感じていましたから、どんなにつらい仕事も喜んでやりました。ヨセフは、神様のことは一言(こと)も話さなかったのですが、ヨセフの姿を見たポテパルは、神様がヨセフと共にいらっしゃるということを知りました。ヨセフがすることは、すべてうまくいきました。そこで、ポテパルはヨセフを信用し、家の中の仕事は全部ヨセフに任せるようになりました。

 ところが、ある日、ポテパルの奥さんがヨセフに意地悪(いじわる)をしたために、何も悪いことをしていないヨセフは牢屋に入れられてしまいました。しかし、ここでもヨセフは神様に感謝しました。牢屋の中に2人の人がいて、夢を見ました。ヨセフはこの2人の夢を解いてあげました。1人は給仕役(きゅうじやく)の長、もう1人は料理役の長でした。ヨセフが解いてあげたように、給仕役の長は牢屋から出て、また元の仕事に戻り、料理役の長は殺されてしまいました。

▲牢に入れられたヨセフ

 2年たったある日、エジプトの王パロが二つの夢を見ました。一つは「やせた7頭の牛が、太った7頭の牛を食べてしまった」という夢で、もう一つは「やせた7つの穂が、太った7つの穂をのみつくしてしまった」という夢でした。パロはこの夢が気になって仕方がありませんでした。エジプトにいるすべての学者や霊能者といわれる人たちを呼んで聞きましたが、だれ1人として解くことができませんでした。

夢を解いたヨセフがエジプトの総理大臣になった
 その時です。ヨセフの夢解きで助けられた給仕役の長が、ヨセフのことをハッと思い出し、パロに話しました。パロはさっそくヨセフを牢屋から呼び出しました。ヨセフは神様に祈り、考え、パロの前で堂々と夢を解き明かしました。「これは、私が解くのではありません。神様がこれからなさろうとすることを教えてくださるのです」と言いました。「エジプトは7年間、たくさんの作物がとれるでしょう。その後の7年間はききんが起こって、作物は一つもとれなくなるでしょう。だから、初めの7年間にたくさんの作物をたくわえておきなさい。そうすれば、国は滅びないでしょう」と言いました。パロと家来たちは「われわれは神の霊をもつこのような人を、ほかに見いだし得ようか」(創世記第4138節)と、神様とヨセフを褒めたたえました。また、パロは「これは神様が、あなたに教えてくださったことだ。あなたのように賢い者はいない」と言って、ヨセフを総理大臣(宰相〈さいしょう〉)にしました。

▲夢を解くヨセフ

 さて、夢のとおりのことが起こりました。エジプトの人々はヨセフのおかげで、食べ物には困りませんでした。ところが、他の国には食べ物がなかったので、他の国の人々はエジプトまで食料を買いに来ました。その中にはヨセフのお兄さんたちもいました。お兄さんたちは、前に立っている総理大臣がヨセフとは知らず、頭を下げて「食べ物を売ってください」と頼みました。ヨセフが昔話した夢のとおりになったのです。

ヨセフは愛と許しの心で他の11人の兄弟と一つになった
 ヨセフは10人のお兄さんたちと、愛する弟ベニヤミンを見た時には、懐かしさのあまり涙が込み上げました。特に、ベニヤミンの顔を見た時には胸がいっぱいで、声をあげて泣きたいくらいでした。ヨセフは、皆の前で泣くのをがまんし、急いで別の部屋に行って、1人で泣きました。そして、自分をエジプトに追いやったお兄さんたちをも恨むことなく、食事を共にしました。ヨセフはベニヤミンがエジプトに残るよう、袋の中に杯をしのばせ、ベニヤミンが盗んだように見せかけました。お兄さんのユダは、父ヤコブのことを話し、「ベニヤミンを失ったなら、先にヨセフを失った以上にヤコブは悲しみ、死んでしまうでしょう。父をそんなふうなめにあわせたくない」と言って、ユダはベニヤミンの代わりに「自分を奴隷にしてほしい」と訴えました。ヨセフは、そんな父を愛するユダの姿を見ながら、エジプトびとを他の部屋に追いやり、ヨセフは大声で泣きました。「わたしはヨセフです。お父さんは元気で生きていらっしゃいますか?」と、初めて自分の名前を明らかしました。お兄さんたちは驚き、恐れました。自分たちが前にヨセフにやった悪いことを思い出したからです。

 しかし、ヨセフはお兄さんたちを許しました。「お兄さんたちが私を売ったのではなく、神様が私をエジプトにお遣(つか)わしになったのです。そして、ききんからあなたがたを救うために先に遣わされたのです。これは神様がなさったことなのです」と言って、「お父さんの面倒をよく見てくれました」と感謝しました。そして皆で抱き合って喜び、泣きました。お兄さんたちは、自分のしたことを「悪かった」と心から悔い改めたのです。このあと、お父さんのヤコブをカナンの地からエジプトに呼びよせ、幸せに暮らしました。

▲出会いを喜ぶヨセフと11人の兄弟たち

 ヨセフはどんなところにいても神が共にあることを知り、また自分に対して悪を働いてくる者に対して、真の愛で許してあげました。皆さんも、ヨセフのような真の愛の人になりましょう。

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 次回は、「モーセ」をお届けします。



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