スマホで立ち読み Vol.36
『こども礼拝』11

林三男・著

(光言社・刊『こども礼拝 親と子のための説教集』〈200549日初版発行より)

 スマホで立ち読み第36弾、『こども礼拝』を毎週日曜日(予定)にお届けします。
 「光の子園」での礼拝説教をまとめた、幼児から小学生低学年向きの説教集です。小学生礼拝のテキストとしても最適です!

※本文中の呼称・用語は、全て掲載当時の名称です。

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10. ヤコブとエサウ

〈ポイント〉
①ヤコブとエサウの誕生と神様の願い。神様をより愛するヤコブが長子権(ちょうしけん)を得た。リベカの母子協助(ぼしきょうじょ)により、ヤコブが祝福を受けることができた。
②ヤコブはラバンおじさんの所においての20年間の苦役(くえき)の後、多くの財物(ざいぶつ)と人を得た。
③ヤコブは天使との戦いにおいて、絶対に負けないという執念(しゅうねん)をもって闘い抜き勝利し「イスラエル」の称号をもらった。
④ヤコブはエサウを愛し尽くすことによってエサウの恨みを解いた。

〈聖書:創世記第24章~33章参照〉

ヤコブが神の祝福を受ける者となった
 今日は「ヤコブとエサウ」のお話をしましょう。イサクが大きくなって、アブラハムの親族の1人、リベカと結婚しました。そして、2人の間から双子(ふたご)の男の子が生まれました。リベカのおなかの中に赤ちゃんがいる時、おなかの中で赤ちゃんが押し合うので、神様に祈って尋(たず)ねました。すると、神様は言われました。「二つの国民があなたの胎内にあり、二つの民があなたの腹から別れて出る。一つの民は他の民よりも強く、兄は弟に仕えるであろう」。リベカは、このみ言(ことば)を忘れませんでした。

 初めに出てきた赤ちゃんは、赤くて全身毛ごろものようでした。それで名前をエサウと付けました。後から出てきた赤ちゃんは、エサウのかかとをつかんでいたので、ヤコブと名付けました。

 2人は姿も性格も全く違いました。お兄さんのエサウは、外を歩くのが好きで、狩りが大好きでした。弟のヤコブはとても穏やかな性格で、天幕の中に住み、特にお母さんの手伝いをよくしました。

▲狩りに行くエサウと天幕で過ごすヤコブ

 お父さんのイサクは鹿の肉が大好きで、エサウを愛しました。けれども、お母さんのリベカはヤコブを愛しました。礼拝をしたりすることがあまり好きでないエサウが、お父さんの後を継(つ)いで、神様の祝福を受けて良いものだろうかとリベカは思っていました。祝福を受けるのは、神様を愛するヤコブのほうがふさわしいと思っていました。

 ある日、ヤコブがレンズ豆のあつものを煮ていると、狩りに出ていたエサウが、疲れて野から帰ってきました。「おなかがすいた、死にそうだ、お願いだ、その赤いものをわたしに食べさせてくれ!」エサウがヤコブに頼みました。ヤコブは「まず、あなたの長子の特権(とっけん)を、わたしに売りなさい」と言いました。するとエサウは「わたしは死にそうだ! 長子の特権など、わたしに何になろう」と、レンズ豆と長子権をあっさり取り替えてしまったのです。長子権というのは、一番上のお兄さんが神様からお父さんを通して一番良いものを一番多くもらうことです。エサウは愚かなことをしてしまいました。

▲ヤコブに長子の特権を売るエサウ

 いよいよお父さんのイサクも年をとり、目がかすみ、見えなくなってきました。それで、長男のエサウに祝福を与えようとしました。しかし、お母さんのリベカは、ヤコブに祝福を受けさせたかったのです。リベカは神様に祈り、知恵を頂いて、ヤコブのほうが祝福を受けられるように考えました。エサウが鹿を捕りに行っている間に、ヤコブをエサウのように見せかけるため、エサウの晴れ着をヤコブに着せて、全身毛ごろもになるように、やぎの皮を手と首に着けさせました。そして、鹿の肉の料理のような、おいしい食べ物とパンをヤコブの手に渡しました。イサクは、目がかすんでよく見えませんでした。手でその体をさわると毛深かったので、すっかりエサウだと思いました。そして、ヤコブに神様の祝福を与えました。

▲イサクがヤコブを祝福する

 その後、祝福を受けるためにエサウが狩りから戻ってきました。けれども、時は遅かったのです。エサウは祝福を受けることができませんでした。ヤコブに二度もだまされたエサウは、ヤコブを憎みました。「ヤコブを殺してやるんだ」。このことを知ったリベカは、ヤコブをリベカのお兄さんであるラバンおじさんのところへ行かせました。

神様に愛されていることを確信したヤコブは、ラバンのもとで20年の間苦役をしたが勝利した
 たった1人で砂漠のような荒野を旅するのは寂しくつらいことでした。ある夜、石を枕にして寝ていると、ヤコブは夢を見ました。神様が言われました。「わたしはあなたと共にいて、あなたがどこへ行くにもあなたを守り、あなたをこの地に連れて帰るであろう」。ヤコブはその時「神様は私を愛している。神様はいつも私のそばにいる」と確信しました。どんな苦労も苦しいとは感じませんでした。すべてのことに喜びと感謝でいっぱいでした。

 ヤコブは20年間、ラバンおじさんの所で働きました。その間、ラバンおじさんに10回もだまされ、意地悪をされました。それでもヤコブは感謝して、我慢し続け、尽くしていったので、神様はヤコブに多くの家族と財産を与えられました。

 けれども、ヤコブの心の中にはいつも、別れてきたエサウ兄さんのことがありました。懐かしい故郷に帰りたい。そして、みんなで仲良く暮らしたい。20年たった時、ヤコブはラバンおじさんのもとで得たものすべてを引き連れて、故郷に向けて出発しました。カナンへ帰ろうとするヤコブに、また次の試練が待っていました。ヤボク川に来た時、突然天使に襲われたのです。一晩中闘い続けても勝負がつかず、天使はヤコブのもものつがいをはずしました。しかし、ヤコブはその痛みに耐えて、命懸けで闘ったので、ついに天使に勝利しました。その時、ヤコブはイスラエルという名前を頂きました。

ヤコブが愛をもって与え尽くしたのでエサウの恨みが解かれた
 さて、いよいよヤコブはお兄さんのエサウの待つカナンの地にやって来ました。エサウは、400人の家来を引き連れて待ち構えていました。20年たってもヤコブを憎み、恨み続けていました。エサウの怒りは解けていなかったのです。ヤコブの心はエサウに対して何の恨みもありませんでした。自分が神様から頂いたものすべてをあげても、エサウと仲直りがしたいと願いました。神様に祈って、自分ができる限りの最善を尽くそうとしました。

 ハランの地で得た、牛、らくだ、羊などの家畜を惜しまず500頭以上も、3回に分けて、エサウに贈りました。そして、いよいよエサウの前に現れたヤコブは、七度身を地にかがめ、おじぎをしました。ヤコブは必死でした。何とかお兄さんのエサウと仲直りができるように。神様に祈り、精いっぱいの真心を尽くしたのです。これを見たエサウはどうしたでしょうか。エサウは走ってきてヤコブを迎え、ヤコブを抱いて、共に泣きました。「ヤコブ、会えて良かった」とエサウが言うと、「あなたが、喜んで迎えてくださるので、あなたの顔を見て、神様の顔を見るように思います」とヤコブはエサウに言いました。エサウの心はもう、うれしさでいっぱいでした。恨みが完全に解けたのです。

▲和解するヤコブとエサウ

 このようにしてヤコブが愛をもって与えて与えて尽くしていったので、エサウの恨みが解かれたのでした。神様の願いが果たされたのでした。2人が抱き合い、共に泣く姿を見た神様はどれほどうれしかったでしょう。皆さんもヤコブのように神様を愛する人になりましょう。

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 次回は、「夢を解いたヨセフ」をお届けします。



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