2025.04.25 17:00
青少年事情と教育を考える 290
選択的夫婦別姓~「子供の福祉」が大きなポイント
ナビゲーター:中田 孝誠
選択的夫婦別姓についての議論が盛んになっています。今回は、現在のポイントを整理してみようと思います。
最大の問題は「子供の姓をどうするのか」という点です。
国会では、立憲民主党が法案を策定し、国会への提出を目指して他党との連携を呼びかけています。同党の案は子供の姓を結婚時に決めるというものです。
日本維新の会は旧姓の通称使用の法制化を訴えています。一方、自民党は党内で賛否が分かれています。
選択的夫婦別姓の議論は、1996年の法制審議会の答申が転機となっています。しかし近年では2015年と2021年の2回、最高裁で民法と戸籍法が定める現在の夫婦同姓の制度は合憲である、という決定が出されています。
今回の議論のポイントの一つは、旧姓の通称使用拡大への賛同が広がっていることでしょう。世論調査でも通称使用への賛成が多くなっています。
もう一つ、重要な争点になっているのが子供への影響です。以前の議論でも子供への影響を懸念する声はありましたが、今回はさらに大きな課題となっています。
子供たちへの調査でも、家族を表すファミリーネームが異なることへの不安が現れています。産経新聞が昨年末、約2000人の小中学生を対象に行った調査では、「家族で名字が変わるのはよくないので反対」という回答が49%、「家族で同じ名字がよいので別々にはしたくない」が60%でした。家族の絆が揺らぐことへの不安を子供なりに感じているのではないでしょうか。
こうした子供たちの声があるからか、夫婦別姓推進派と見られるメディアでも「子の姓には十分配慮すべきだ。96年の法制審答申では『別姓夫婦が結婚時に子の姓を選び、子は成人後に変更できる』などとしているが、子の不利益にならぬよう議論を深めるべきである」(東京新聞2025年1月11日「<社説>選択的夫婦別姓 制度導入へ議論を前に」)と述べています。
夫婦別姓が子供に与える影響について、それだけ大多数の大人が不安を感じていることの表れだと言えるでしょう。
夫婦別姓を進めるということは、親子別姓はもちろん、場合によっては兄弟別姓という可能性もないわけではありません。
こうしたことを踏まえて、現在の別姓案が子供の不安に応える配慮がされているのか、問い直す必要があります。
ちなみに、子供の姓の問題について、夫婦別姓制度が社会に定着すれば問題ないという意見があります。ただ、一つの制度が定着するには数年はかかります。その間、大切な成長期にある子供たちをどうするのでしょうか。
いずれにしても、法律論だけでなく、子供の福祉の観点を重視すべきです。