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ダーウィニズムを超えて 107

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(五)人間原理、万物理論、新しい統一原理

(4)ひも理論の人間原理的ランドスケープ
 レオナルド・サスキンドは2003年に「ひも理論の人間原理的ランドスケープ」を提唱した。サスキンドの言うランドスケープとは、現実の場所でなく、「それは数学的な建築物であり、ランドスケープ上の一つひとつの点は可能な環境、すなわち物理学者が言う可能な真空を表す(*61)」のである。

 その当時、ひも理論家たちによって、真空には10500乗通りもの異なる膨大な真空があるということが示されていたのであるが、それに関してサスキンドは次のように言う。

 今日、私たちは「すぐそこにある」成功がまぼろしだったことを知っている。……1990年代に、可能性の数は指数関数的に増大した。ひも理論家たちは、驚くべきランドスケープが登場し、そこに非常にたくさんの谷があって、そのどこかにほとんどあらゆるものを発見できることを、恐怖をもって見つめた(*62)。

 にもかかわらず、サスキンドは人間原理(弱い人間原理)の立場から、その無数にある真空の中の一つが、たまたま我々の宇宙であると主張している。そして22世紀になる頃には、今の時代を、偏狭な古い宇宙観がメガバースに道を譲った黄金の時代として思い出すであろうと言う。

 私たちはいま、このプログラムに向かって最初の試験的な一歩を踏み出したところです。たいへん手ごわい問題が行くてに横たわっています。「しかし、私は賭けてもいい」、とレオナルド・サスキンドは書いています。「22世紀になるころには、哲学者と物理学者はいまの時代をなつかしく振り返り、狭く偏狭な20世紀の宇宙の概念が、気の遠くなるほど広大なランドスケープを満たす、もつと巨大で奥深いメガバースに道を譲った、黄金の時代として思い出すだろう」(*63)。

 ニール・トゥロックはそのような、ひも理論にたいして、「万物の理論」というよりは「何でもありの理論」のようだと揶揄(やゆ)している(*64)。


*61 レオナルド・サスキンド、村田陽子訳『宇宙のランドスケープ』日経BP社、2006年、121頁。
*62 同上、163頁。
*63 アレックス・ビレンケン、村田陽子訳『多世界宇宙の探検』日経BP社、2007年、281282頁。
*64 ニール・トゥロック、村田三知世訳『ここまでわかった宇宙の謎』日経BP社、2015年、251

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 次回は、「純粋数学に基づく万物理論」をお届けします。


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