2025.04.14 22:00
facts_3分で社会を読み解く 63
「不当寄附勧誘防止法」の問題点(7)
宗教を否定し侮辱する「不当寄附勧誘防止法」
ナビゲーター:魚谷 俊輔
「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)」は施行後2年が経過し、改正の時期を迎えている。この法律の問題点を指摘するシリーズの第7回である。
「不当寄附勧誘防止法」の問題点(6)から具体的な条文の不備の指摘に入った。
今回はその続きである。
同法は第4条の「禁止行為」の中に、「六 当該個人に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、当該個人又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該寄附をすることが必要不可欠である旨を告げること」を含めている。
そもそも宗教においては、人間の行動、社会の事象、自然現象などが、「神の意志」「聖霊の働き」「悪魔の誘惑」「悪霊の働き」「怨霊の憑依(ひょうい)」などに支配あるいは影響されていると捉え、厄災の除去、人間行動の規律、そして幸福の追求のために、神の霊感を受けた宗教職(祭司、僧侶、宮司、牧師など)が働くことが期待されている。
その際には、神や仏などの善なる存在によって「生命を与えられる」「幸福を授かる」「成功を収める」などのポジティブな表現のみならず、「地獄に堕(お)ちる」「罰が当たる」「災禍に見舞われる」「転落する」などのネガティブな表現を使って説教や訓示がなされることも少なくない。
この法律の霊感勧誘の禁止が宗教団体の宗教行為に適用されるとしたら、全ての宗教団体の宗教活動が禁止されることになってしまう。
この法律における「霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として」という規定は、消費者契約法の規定を引き継いでいる。ここでも世俗の論理が宗教の聖域に踏み込む形になっているのである。
この法律においては、「霊感」という用語を、合理的に説明することが困難な、個人が有すると主張する特別な能力であると捉えているが、この理解の仕方そのものに問題がある。
そもそも「霊感」とは、第一に神仏の力や神仏の働きを意味し、第二に神仏に関わる神聖な働き、第三に信仰や修行などによって神仏との一体性や密接性を通して得られる霊的な体験を意味し、諸宗教において神聖に扱われている事柄である。
従って、「霊感」は宗教上特別の敬意を持って扱うべき言葉であるにもかかわらず、この法律では詐欺的な表現の一例に貶(おとし)められており、反宗教的な色彩が強くなっている。
結果的にこの法律は、「信教の自由に十分配慮しなければならない」旨を規定しながら、宗教を否定し、宗教を侮辱するものになっているのである。