夫婦愛を育む 40
「夫が経済的に不安定です」

ナビゲーター:橘 幸世

 女性は一般的に安定を求めます。結婚して、夫の収入が安定しないと、不安がストレスとなってたまります。そんな経済的な不安定さは当然夫婦関係にも影響します。悩んで、私の講座に来られるかた、本で勉強されるかた、メールで相談されるかた、さまざまなケースを見てきました。

 一口に夫の収入が不安定と言っても、理由はいろいろです。何か嫌なことがあると我慢ができず辞めてしまい、一つの職場に長続きせず転々とする人もいれば、自分のやりたい事と違っているからと辞める人もいます。

 この春父親になったばかりの知人は、会社からお給料をもらって大学の博士課程に通うという恵まれた立場にいながら、卒業後は会社を辞めるつもりでいます。何か不満があるわけではなく、もっと他の世界も見てみたい、と言って。彼の周りには転職した友人も少なくないそうです。

 また、自営業をしていて収益の波が激しいというケースもあります。ある女性は、事業で大きく成功したいという夫をけなげに支えながら国内外を転々としてきました。夫を信じて前向きにやってきましたが、その不安定さに疲れ果て、子供の将来を考えるとさらに不安が増して、限界だと言ってきました。

 いかなるケースにせよ、私がそんな女性たちにお伝えしている原則は同じですので、皆さんそれぞれの立場と環境の中で原則を実践されます。

 我慢がきかず簡単に仕事を辞めてしまったり、果ては働かなかったりする夫を見れば、こんなにいい加減で頼りない人だったのかと思いがちです。中には、そんな男性と結婚してしまった自分を責める人もいます。けれど、学んだ内容を妻が心にしっかり留めて実践すると、夫の心が喜び、その喜びが自信と責任感を湧き立たせ、家族のために多少の事は我慢して働き続ける夫に変わるのを見てきました。

 また、やりがいを求めて(仮に収入が減っても)転職をしたり、自営で頑張っている男性は、主体性が強く頼もしいのではないでしょうか。そんな長所に焦点を当てて、信じて支えましょう。安定を優先して、夫に不本意なかたちで働かせるのは、賢明とは言えません。彼の自尊心は傷つき、悔いや恨みが残れば、夫婦関係に影響を及ぼしかねないからです。男性は、家族にいい暮らしをさせたいと思って働いていますし、波があっても「最低限、食べるに困らせないぞ」という責任感があります。

 いつ何が起こるか分からないような、不安定要素がますます多くなっているこの時代。何かあっても支え合える関係を築くことこそが、一番の平安につながるのではないでしょうか。