夫婦愛を育む 41
「どうしてそんなに怒るの?」

ナビゲーター:橘 幸世

 私の講座で学んだことのある婦人が、先日こんな話をしてきました。

 夜、楽しく夫婦で会話をしていたら、普段穏やかなご主人がいきなり「どうしてそんな言い方するんだ!」と強い語調で言ってきました。驚いた彼女は、一呼吸おいてから「どうしてそんなに怒るの?」と聞き返しました。そう聞かれてハッとしたのか、ご主人は怒りを自制して、硬い語調ながら話を続けました。その後は、夫婦無言、気まずいまま床に就いたそうです。

 彼女は講座で男女の違い、特に、洋の東西を問わず男性は妻からあれこれ言われるのを一番嫌う、ということを学び、心に留めてきました。
 「何で怒るの? 私今、何かいけないこと言った?」となるパターンも聞いていましたが、やはりいきなりなので驚いたそうです。

 怒られた彼女は、当然面白くない気分で休みました。が、同時になぜ夫が気分を害したのか、考えました(学んだだけありますね)。
 その晩は、前々からご主人が親族のためにやりたいと思っていた事が話題でした。願ってはいたものの、あれこれと忙しいご主人はなかなかそれに取りかかれずにいました。彼女も彼の考えに賛成していましたが、嫁という立場ゆえ、あくまでも夫のペースを尊重し、急(せ)かすこともせず待ってきました。

 そんな中、その件について「ああしてこうして」と話していたご主人に、「まず、~に話さなくちゃね」と言った彼女に、彼が怒ってきたのです。責めるつもりなど毛頭なく、事の順番として(実務派の彼女らしく)普通に言っただけなので、彼の態度に驚いたのでした。

 彼女としては精いっぱい夫の意思を尊重し、夫のペースに合わせてきたのに……、と承服できない思いもありつつ、考えてみました。
 そして、忙しいからなかなか取りかかれないのも無理はないと十分に理解しながらも、「~したい」と折に触れて口にしながら行動が遅い夫に対して、心の奥底に否定的思いがあったことに気付いたのでした。そんな思いが底にあって「まず~しなくちゃ」と言ったので、彼が不快に感じたのだ、と分かったそうです。

 (これは私の想像の域を出ませんが、ご主人もなかなか実行に移せないでいることを自覚していたところに妻に言われたので、責められたように感じて怒ったのではないでしょうか。)

 翌朝はお互い歩み寄って、気まずいのは一晩で済みました。
 「純粋な心になるのは、難しいですね」と彼女。
 でも、そんなふうに時々ぶつかりながら(ぶつかればこそ)、学び、二人で成長していくのだと思います。