夫婦愛を育む 37
「過去の傷が癒えていくのを感じました」

ナビゲーター:橘 幸世

 先月放送終了したNHKの朝ドラ『半分、青い。』から再び。

 主人公の鈴愛(すずめ)が仕事における挫折や離婚を経て、幼なじみの律やかつて恋した正人と東京で再会し、旧交を温めるシーンがありました。3人で語らう中で、「鈴愛は、過去の傷が癒えていくのを感じていました」というナレーションが入ります。

 正人にふられ、その後、律にサヨナラを言われたのが20歳前後、数年後にまた律とすれ違ってしまいます。
 3人が再会したのがアラフォーですので、約20年越しの傷が癒えたことになります。一回のナレーションでさらっと触れただけでしたが、私には共感するものがありました。

 私の場合は恋愛関係の傷ではありませんが、さまざまな出会いの中で、傷や悔い、負債感などの負の感情を残したまま(異動などの理由で)別れたケースがあります。
 誰が責めなくても、時間やうれしい出来事がその傷を小さくしてくれても、傷跡は残っています。もはや痛みも感じず普段は忘れていますが、何かの折に思い出すとチクっと痛みます。

 そんな傷の一つ、心に刺さったとげとでも言いましょうか、それが抜ける機会に昨年は恵まれました。当の相手との20年ぶりの再会です。笑顔で再会できたこと、それ自体が解放でした。
 祈りや内省を通して心の内を整理することがまず第一ですが、やはり、それだけでなく、具体的に相手と言葉を交わすことが大きいです。

 人間は一人では生きていけませんので、人と関わることは避けられません。その中で、意図せずとも傷つけたり傷つけられたりします。精いっぱい生きようとすればなおのことかもしれません。

 傷ができた当初は痛くてつらいですが、時を経て振り返れば、それが成長するためのプロセスだったと分かります。そして、人の痛みが分かり、その痛みを昇華する手助けをすることができるようになるのです。

 時にはその傷の一因となった相手と向き合えるようになるのに、年単位の歳月を要することもあるでしょう。物理的にその機会がなかなか巡ってこないかもしれません。いずれにしても、その期間が、私たちが成長し器を広げる期間となります。

 今、傷の痛みの真っただ中というかたは、なかなか「これも勉強だ」などと受け止められないかと思いますが、その苦しさがずっと続くことはありません。
 言い尽くされてきた言葉ですが、「明けない夜はない」「夜明け前が一番暗い」「必ず光が差してくる」・・・一生懸命生きていけば、人生ってそういうものだと思います。