孝情を育む 16

 『ムーンワールド』で連載された、蝶野知徳・家庭教育部長による子育てに関するエッセーを毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
 孝情を育む子女教育について、どんな姿勢で向き合えばいいのかを分かりやすく解説しています。

家庭教育部長 蝶野知徳

どんな時も愛を伝えよう

子供が嘘をつくときの心理状態
 子供が嘘(うそ)をついて困るという話を耳にします。子供が悪い方向に行っているのではないかと心配する向きもあるようです。しかし、子供は「叱られないようにしている」だけかもしれません。子供が空想や夢物語を事実のように話すのは、問題ではありませんが、明らかに自分の非を隠すための嘘が続いてしまっている場合などは、「叱られないため」だと思われます。つまり、お母さんに嫌われたくないからです。お母さんのことが好きで、愛しているからなのだと受け取ってもいいでしょう。

 普段からよく子供を叱っていると、自分を守ろうとして嘘をつくということが多くなります。問題は嘘そのものではなく、嘘でなければ自分を受け入れてくれないと考えている子供の心理状態です。その誤解を解いてあげれば、嘘はつかなくなります。

 「それは嘘でしょ! お母さん知ってるわよ!」「あなたは嘘つきなの?」と言って、叱るのはよくないことです。「それは本当なの? お母さんは本当のことを知りたいんだけど」という具合に、明らかに嘘だと分かっている場合は、「嘘をついたこと」に焦点を当てずに、「本当のこと」に焦点を当てて尋ねる問いかけ方が良いのです。

 そうすると、子供も最初は言葉に詰まったとしても、お母さんが目線を合わせ、心を開いてすべてを受け入れる愛で、言葉を待ってあげれば、必ず本当のことを話してくれるようになります。子女が正直に言った時には、それを喜んで、「ありがとう! 本当のこと教えてくれて、お母さんうれしい!」と、ぎゅっと抱いて褒めてあげれば、それで良いのです。

すべてを受け止め信じてあげること
 このような体験をすれば、お母さんは自分の存在を丸ごと愛してくれているのだという、大きな安心感を持つことができます。正直に言った自分をお母さんは愛してくれていた。嘘をついた自分ではなく、お母さんに抱き締めてもらったほうの自分を肯定したいので、嘘をつく自分を捨てても、もう不安にはならないのです。

 このように、自己肯定感というものも、長所を褒めることで育むだけでなく、ネガティブな行動を起こした時、それを受けとめ、より信じてあげることによって、育まれることもあるのです。ですから、子女の長所だけを探して関心を持とうとするのではなく、課題と感じてしまう様々な行動に対しても、しっかり対応していけば、いくらでも愛を伝えられるようになっているのです。

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 次回は、「よく手が出てしまう子」をお届けします。


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