https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4229

孝情を育む 15

 『ムーンワールド』で連載された、蝶野知徳・家庭教育部長による子育てに関するエッセーを毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
 孝情を育む子女教育について、どんな姿勢で向き合えばいいのかを分かりやすく解説しています。

家庭教育部長 蝶野知徳

母の安心感が子女の安心感へ

心情の幅を広げましょう
 母親が他の誰とも関係を築かず、孤立しながら子女だけを見ていると、自分の姿が見えなくなってしまうことがあります。気持ちの幅が狭くなってしまうと子女への見つめ方も狭くなってしまい、子女の本性を見つめて待ってあげるという余裕もなくなってきます。

 問題の解答を得ようとする前に、感じたことを夫婦で共有して、確認するだけでも心情的な孤立を防ぐことにつながります。夫婦で事情を共有することで、自身が体験していることを、客観的に見つめることができます。

 問題と感ずるほとんどのものは、子女の中にあるのではなく、それを引き出してあげるべき側の責任に絡んだものですから、接する親の心情の幅がとても大切になるのです。子女に接しながら、気持ちの余裕がなくなってしまったら、子女の側ではなく、余裕を失っている自分自身の側に焦点を当ててみるほうが、解決の道が探れるのです。

 また、夫婦の間だけでなく、知人友人など、母親同士の関係の中で慰労と励ましを受けたりすることも、心情の幅を広げる力になります。人間関係や生活自体に、楽しさや安心感を感じるようになったとき、気持ちの余裕も生じ、子女への見つめ方も変わります。

「安心という基地」づくりのために
 子女も、家庭や母親との関係において安心感を持てると、自分にはすべてを受け入れてくれる「基地」があると理解するようになるので、その「安心という基地」を中心として積極的な行動をとれるようになってきます。

 例えば、友達の輪や集団になじめないということなどは、幼児期においてもよくあることですが、安心感が育つにしたがい、外に向かう力が出てくるのです。

 子女の安心感を育てるには、どんな感情を親に見せても、親が受容の心ですべてを受け入れてくれたという肯定的な体験の積み重ねが貴重になります。そのためには、子女に手をかけ、信じて待つという親自身の心の余裕が必要です。そこで得た安心感によって、子女の自尊感情が芽生え、外に向かって自信を持って冒険できるようになります。

 これらの親の姿勢は、幼児期においても、小学生期でも基本的に同じです。特に、子女の自立のためには、最初に母親からの無条件の受容の心が力になっていくのです。すべてを受け入れ、抱きしめて、慰労と励ましの言葉をかけながら、愛してあげることのできる、心の余裕をつくることが大切です。

---

 次回は、「どんな時も愛を伝えよう」をお届けします。


◆「孝情を育む」が書籍になりました! タイトルは『子女と向き合うことは神様と向き合うこと』
 ご覧になりたいかたはコチラ