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ダーウィニズムを超えて 43

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

四章 創造神話と新創造論

四)回転による創造

 垂直に立てた柱を中心として、ガスや海を攪拌(かくはん)しながら世界が創造されたという神話がある。また柱を立てて、その周囲を人々が踊りながら回るという風習も世界各地で見られる。

1)古代インドの乳海攪拌
 遠い昔、ヴィシュヌ神(Vishnu)が神々に、マンダラ山を攪拌の棒とし、ヴァースキ龍(Vasuki)を綱(つな)にして乳海をかき混ぜるように命じた。ヴィシュヌ自身も巨大な亀に姿を変えて回転の軸受けとなった。この攪拌によって、月と太陽、女神ラクシュミー(Lakshmi)、白い象などが現れた。最後に、神々の侍医ダヌヴァンタリ(Dhanwantari)が不死の霊薬を奪ったが、ヴィシュヌがそれを取り返し、神々はそれを飲んで勢力を回復した。ヒンドゥー神話における乳海攪拌を図4-12に示す。

2)巨大な火柱(リンガ)の出現
 『リンガ・プラーナ』はシヴァのリンガについて、次のように伝えている(*11)。ヴィシュヌとブラフマーが自分こそ最も偉大な神だと言い合っていると、水中から巨大な火柱が出現して、彼らを黙らせた。ヴィシュヌは猪(いのしし)になって水に潜り、ブラフマーは鳥になって空に飛んで火柱の先端を確かめようとしたが、見つけることができずに戻ってくるとシヴァが姿を現した。この火柱はシヴァの宇宙的形相であり、その現生的なシンボルがリンガ(ファルス、男根)であるという。リンガにたとえられた火柱とは、宇宙創造の柱であると言えよう。

3)天の沼矛(日本の神話)
 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)を中心とした五つの別天神がイザナギとイザナミの二神に天(あめ)の沼矛(ぬぼこ)を授けた。イザナギとイザナミが天の浮橋(うきはし)に立って、橋の上からはるか下に長い沼矛を下して、雲の海をぐるぐるとかき回すと、矛の先からポタポタと塩がしたたり落ちた。落ちた塩が重なり積もって、オノゴロ島ができた(図413)。

 イザナギとイザナミの神は、オノゴロ島の真中に天の御柱(みはしら)を立て、この御柱のまわりを回って、夫婦の交わりをして国生みのわざをなした。淡路島を始めとして八つの島が生まれた。かくして大八島の国である日本列島が誕生したのであった。

4)おんばしら
 日本には、諏訪大社のおんばしらという行事がある。山から切り出した木を落として、神社に垂直に立てる行事である。このような日本のおんばしらに似た、柱立ての祭は世界の各地において見られる(*12)。アジアでは、ネパール・カトマンズ地方の「インドラ・ジャートラの柱立て」、インド・アッサム地方の「アンダミ・ナガ族の扉曳(とびらひ)き祭」、ミャンマー・赤カレン族の「柱立て祭」、タイ西北部・ラフ族の村の広場に立てられる「新年の木」、中国チベット自治区で宇宙のヘソと言われるカイラス山(6638メートル)のふもとに立てられる「聖なる柱」。ヨーロッパでは、スウェーデン・キルナの「ネップランドの夏至の柱」、イギリス・ケント州の「五月の柱(メイポール)」、ドイツの「オクトーバーフェスト」。中米ではメキシコ・パパンドラの「フライング・インディアン」。

 イギリスのメイポールとは、51日のメーデーに、教会や町の広場に柱を立て、その先端に緑の葉を結び、結びつけたひもを手に持って、その周囲をまわりながら踊る風習である。これらの風習は、いずれも、柱を立てて、神や精霊との交歓の手段にするものであるといわれる。

 日本画家の鳥居礼(れい)は、回転する柱が日本文化の奥にある宇宙創成の型であると、次のように述べている。

 始原神の息から宇宙大の壷ができ、そこに回転する柱が生じ、その柱の中からさらに左右に回転するヲ(+)とメ(-)が生じた。ヲは天となりメは地となった。さらにヲ・メは固まって日月となった。これが本来の宇宙創成の型であり、日本文化の奥底には、これらの要素が何らかの形で眠っている(*13)。

5)現代科学の宇宙像
 宇宙誕生から10億年後、水素とヘリウムから成る熱いガスが冷えて凝縮し、数多くの銀河を形成した。クェーサーは当時の銀河の活発な中心核であるといわれているが、ビームを中心として回転している。星の死である超新星の爆発の跡に残されるのがパルサーと呼ばれる中性子星である。中性子星はX線ビームを中心として高速で回転している。銀河においても、中心核にあるブラックホールは物質をジェットで宇宙空間に吐き出すエンジンとして働いており、中心から噴出するジェット流を中心軸としてガス雲が高速で回転している。

 このように現代科学の宇宙像から見て、星や星の集団である銀河は、軸を中心として回転しながら誕生し、存在し、死を迎えているのである。

6)宇宙創造における回転と新創造論
 神の宇宙創造は創造の原理である天道によって行われ、宇宙は天道によって運行している。主体と対象が中心軸を中心として円満な授受作用を行い、円環運動を行いながら、存続し発展しているというのが、その基本的な法則である。したがって宇宙の創造も、銀河の運行も、星の最後も、中心軸を中心として回転しながら営まれているのである。人間においては、男と女が縦的な真(まこと)の愛(神の愛)の軸を中心として愛し合うとき、真なる夫婦となるのであり、個人においては、心(生心)の軸を中心として体(肉心)が従うことにより、真なる人格を形成するのである。神話においても、そのような神の創造の原理を表現していたのである。主体と対象の中心軸を中心とした円環運動を図414に示す。


*11 C. Scott Littleton, general editor, Mythology (San Diego: Thunder Bay Press, 2002), 335.
*12 宮坂清通他『おんばしら——諏訪大社御柱祭のすべて』信州・市民新聞グループ、2003年、239頁。
*13 鳥居礼「日本文化の基軸に求道精神」世界日報、2007728日。

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 次回は、「言(ことば)による創造」をお届けします。


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