世界はどこに向かうのか 280
北朝鮮、韓国に向けて200発の砲弾発射

2024.01.09 12:00

世界はどこに向かうのか
～情報分析者の視点～

北朝鮮、韓国に向けて200発の砲弾発射

渡邊芳雄（国際平和研究所所長）

　今回は、1月1日から7日までを振り返ります。

　この間、以下のような出来事がありました。

　石川県能登半島で大規模地震発生（1月1日）。韓国軍、北朝鮮近くで大規模訓練（2日）。金正恩（キム・ジョンウン）氏の娘「有力な後継者」、韓国国家情報院が見解（4日）。北朝鮮が200発の射撃韓国で避難命令（5日）。中国からの気球飛来？台湾が批判（6日）。新疆のモスク、中国様式を義務化へ（6日）。ウクライナ、ミサイル残骸「北朝鮮製」と公表（6日）、などです。

　韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が1月5日午前9時から11時ごろ、黄海上の韓国の離島・白翎島（ペンニョンド）と延坪島（ヨンピョンド）の北方に向けて200発以上の砲撃を行ったと発表しました。
　砲弾は、海上の南北境界線に当たる北方限界線（NLL）の北側の海面に着弾しました。

　情報機関・国家情報院は昨年12月28日、北朝鮮が、「来年初めに韓国に対する軍事挑発を強行する可能性が高いと判断している」と文書で発表していました。
　金正恩総書記が直接指示したものだといいます。発表によれば、正恩氏が側近たちに「来年初め（韓国に）波紋を起こす方案を準備せよ」と述べたとのことです。

　北朝鮮では昨年6月、元偵察総局長の金英哲（キム・ヨンチョル）氏が対韓国工作を管轄する統一戦線部顧問に起用されるなど、挑発に関わった人物が最近要職に再起用されており、韓国側は警戒していたのです。

　国家情報院が把握した正恩氏の指示をこのように公開するのは「異例」のことです。
　来年は韓国総選挙と米大統領選挙を控えており、北朝鮮に探知能力を示し、警告を送る狙いがあったのでしょう。

　韓国側は5日、「対抗」として、延坪島などに駐留する海兵隊が午後3時から「挑発に対応するため」として海上砲撃訓練を行いました。しかし北朝鮮はその後、6日、7日と3日連続して韓国に向けての砲弾を発射し、挑発行動を続けたのです。

　朝鮮中央通信は、朝鮮人民軍総参謀部は5日、192発の砲撃訓練を行ったと発表。「年頭から砲撃・機動訓練を行った韓国の軍事行動」に対抗したと述べ、「敵が挑発になり得る行動を敢行する場合、わが軍は前例のない水準の強力な対応を取るだろう」と強調。「民族、同族という概念はわれわれの認識から削除された」と述べています。

　背景にあるのは、金正恩総書記が昨年12月30日まで開かれた党中央委員会拡大総会で表明した今後の方針にあります。
　核兵器の増産計画を指示。核危機の有事には、核戦力など全ての力を動員し、「南朝鮮（韓国）全領土を平定するための大事変の準備に拍車をかけるべきだ」と主張しました。そしてロシアを念頭に、対欧米「共同闘争」方針も示したのです。

　また、南北関係については「同族関係ではなく、敵対的な二つの国家、戦争中の交戦国関係に固定化された」と指摘し、「和解や統一の相手」と見なしてはいけないとし、対韓政策の根本的転換に向けた党統一戦線部などの整理・改編も指示しているのです。

　北朝鮮とロシアとの軍事協力が進んでいます。米国家安全保障会議（NSC）のカービー戦略広報調整官は1月4日、北朝鮮が弾道ミサイル数十発と発射装置をロシアに提供したとの見方を示しました。そしてロシアは昨年末以降、ウクライナに発射したと分析しています。昨年12月30日、ロシア領内から発射され、ウクライナ南部ザポリージャに着弾。今月1月2日にも複数発が攻撃に使われたというのです。

　昨年9月に金正恩氏がロシアを訪問してプーチン大統領と首脳会談を行って以降、軍事協力が加速していることが浮き彫りになっています。
　北朝鮮側の行動に、異様な自信を感じます。日米韓が、結束のレベルを上げなければならない時です。