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脱会説得の宗教的背景 16
超越神(創造神)と汎神論(内在神)の和合統一

教理研究院院長
太田 朝久

 YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
 講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。

 今回からは、キリスト教が説く「超越神(創造神)」と東洋思想が説く「汎神論(内在神)」という、二つの相いれない神観の問題を取り上げ、「統一原理」がこの二つの神観を和合させる観点を持っていることを説明します。

相いれない、異なる“神観”
「汎神論」を嫌うキリスト教
 キリスト教は、東洋思想が説く汎神論(内在神)を極端に嫌ってきました。
 自然界の中に“神仏”が内在しているという「汎神論」の考え方を嫌ってきたのです。
 宗教を和合させるには、キリスト教の説いてきた「超越神」すなわち天地創造をされた創造神と、東洋思想の説く「汎神論」の異なった神観の問題を整理し、両者を和合させる必要性があるといえます。

 さて、20世紀を代表する神学者パウル・ティリッヒ(18861965)は、彼の晩年である1960年に来日し、仏教や神道の人々と対話しました。
 国際基督教大学の古屋安雄氏は、「(ティリッヒが)東洋の諸宗教に対して深い関心をもつようになったのは、晩年に日本に来訪(1960年)してはじめて生きた仏教や神道の人々との対話と出会いを体験し、西欧外の諸宗教の現実にふれてからのことである。……(その後、彼は)宗教学者エリアーデと、共同セミナーをもち、神学と諸宗教について研究をつづけた」(『宗教の神学』ヨルダン社、147ページ)と述べています。

 ティリッヒは東洋思想の仏教と対話することで、キリスト教のパラダイムとは異なった、全く別の宗教パラダイム(理論体系)があることに気付いたのです。
 それ以降、ティリッヒは東洋の諸宗教に深い関心を持つようになり、キリスト教と仏教の比較宗教学に取り組みました。

 ティリッヒは次のように述べています。

 「キリスト教と仏教の両者の体系的位置を正確に規定することが最初に必要であります。かかる試みは比較宗教学の中で最も困難な試みの一つです。しかし、もし成功するならば、その試みは宗教史が研究者に提示している、外観上は理解できないようなジャングル地帯を理解するためにもっとも効果のあることがわかります。……相互関係におけるそれらの位置を指示している道標をたてようとすることがその試みであります」(『キリスト教徒・仏教徒=対話』桜楓社、58ページ)

 ティリッヒは“キリスト教”のパラダイムと正反対のパラダイムが“仏教”の中にあることに気付いたのです。そしてキリスト教と仏教の“思想の違い”を整理して、両者の宗教観を“座標軸”に表すならば、「外観上は理解できないようなジャングル地帯を理解するため」の道しるべになるというのです。

(続く)

※動画版「脱会説得の宗教的背景 第5回『超越神』(創造神)と『汎神論』(内在神)の和合統一」はこちらから