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コラム・週刊Blessed Life 291
イスラエル・パレスチナ(ハマス)戦争の行方

新海 一朗

 2023年107日、イスラム組織ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃によって始まったイスラエルとパレスチナの軍事衝突ですが、日本時間1124日午後2時、4日間の戦闘の一時休止が実現しました。

 このことを、「これは短い休止に過ぎない。戦闘は少なくとも2カ月は続くだろう」とイスラエルのガラント国防相は言い、「われわれは長期戦に向けてあらゆる準備ができている」と、一方のハマスの軍事部門カッサム旅団は長期戦も厭(いと)わないと応じました。

 11月24日、イスラム組織ハマスはイスラエル人などの24人を解放しました。イスラエルは交換条件として、パレスチナ人39人を釈放しました。
 カタール政府が尽力した戦闘停止合意に基づき、24日から4日間の内にハマスは計50人のイスラエル人の人質を、イスラエル政府はパレスチナ人150人を、それぞれ解放することになっています。

 今後の事態がどう進むかは別として、世界で最も解決困難な問題の一つがイスラエル・パレスチナハマス戦争であることは間違いありません。

 イスラエルは75年前の1948514日に独立を宣言しました。
 しかしパレスチナ人から見れば、イスラエルの独立によってパレスチナ社会が崩壊し、多くの人が難民となったのです。
 このためパレスチナ人はイスラエルが独立を宣言した翌日の515日を、アラビア語で「大破局」や「大惨事」を意味する「ナクバ」の日として記憶し、自分たちの苦しみを再確認しています。

 和平プロセスが暗礁に乗り上げる理由として、イスラエルのユダヤ人も占領下に住むパレスチナ人も、いずれも和平への期待感を失ってしまっていることです。
 現在の和平プロセスは1993年に結ばれたパレスチナ暫定自治合意、通称、オスロ合意に基づいています。しかし30年を経て、和平プロセスはすでに破綻したと見られています。

 イスラエルとパレスチナ国家との共存を目指す二国家解決案に関し、パレスチナ人、ユダヤ人共に賛成と反対がほぼ同数で、大差はありません。
 さらに二国家解決案の実現可能性については、両方の社会で「もはや不可能」という回答が多く、しかもパレスチナ人の場合、60%が悲観的な見方をしています。

 オスロ合意以降の和平プロセスが破綻した背景には、暴力の応酬や相互不信、入植活動の継続、パレスチナ側の分裂など、さまざまな理由が指摘されます。
 大きな問題となっているのは、ヨルダン川西岸とガザ地区を含む、イスラエルの全ての支配地域における、ユダヤ人とパレスチナ人の人口バランスです。

 2022年5月時点で、イスラエルの人口は約950万人。その内訳を見ると、ユダヤ人が703万人、アラブ人が199万人、その他48万人となっています。
 一方、2023年の時点でパレスチナ人は約819万人で、その内訳は西岸地区に325万人、ガザ地区に222万人。難民として西岸地区に暮らしているのが108万人(2021年)、ガザ地区に暮らしているのが164万人(2021年)となっています。

 この数字を見れば、イスラエルに暮らすアラブ人たち199万人をパレスチナ人819万に加えると1018万人になります。
 こうなると、ユダヤ人703万人に対して、パレスチナ人とアラブ系を合わせた1018万人は、イスラエルを大きく上回りますから、イスラエル側から見ると、大きな圧力になっていることは歴然としています。

 宗教上、あるいは民族主義的なイデオロギーに基づき、占領地からの撤退に反対し、入植活動を推進してきたイスラエルの右派政党は、その支配地域でユダヤ人が少数派に転落しているという事実を決して認めたくありません。

 しかし1967年の第3次中東戦争以降、819万人のパレスチナ人が、すでに56年以上にわたって占領下に置かれていることは紛れもない事実です。
 特にガザ地区では、ガザ地区住民222万人に難民164万人を合わせると、386万人が15年間以上も封鎖状態に置かれていることになるのです。

 イスラエルは建国以来の75年間で素晴らしい発展を遂げてきました。ハイテク技術は世界をリードしています。
 しかし二国家解決案に基づく和平実現の可能性が遠のく中、パレスチナ問題は今後、イスラエルが抱く危機感になっている人口問題を焦点に新しい展開をしていくように思われます。