コラム・週刊Blessed Life 292
南北で偵察衛星の打ち上げ、緊張を増す半島情勢!

新海 一朗

 11月21日午後1042分、北朝鮮は金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち会いの下、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した新型ロケット「千里馬1型」を北西部の東倉里(トンチャンリ)にある「西海衛星発射場」から打ち上げました。
 国営の朝鮮中央通信は22日未明、その打ち上げは正確に軌道に進入させることに成功したと発表しました。

 北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は、新型のロケットは予定された軌道に沿って飛行し、およそ12分後に衛星を正確に軌道に進入させることに成功したとしています。

 北朝鮮が偵察衛星打ち上げに沸き立つ中、今度は、韓国国防省が122日、米西部カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地で現地時間1日に韓国初の軍事偵察衛星を予定どおり打ち上げ、成功したと発表しました。
 南北両国の軍事的競争が激しくなっています。

 韓国軍の偵察衛星は、米スペースX社のファルコン9ロケットに載せて打ち上げられました。
 地球を周回する軌道に正常に入り、地上との交信にも成功しました。宇宙空間での運用試験を経て、本格的に監視、偵察を始めます。韓国軍関係者によると、46カ月後を見込んでいるということです。

 韓国国防省は「(北朝鮮の核・ミサイル施設を先制攻撃する防衛システム)『キルチェーン』の能力強化につながる」と強調しました。

 韓国は偵察衛星の開発に2017年から着手してきました。
 聯合ニュースによると、地上3050センチ大の物体を識別できるということです。2025年までに計5機による偵察体制を目指しています。
 韓国は北朝鮮に関する衛星情報の8割以上を米国へ依存していましたが、自前の衛星情報を確立する体制へと進んでいます。

 2023年に入って南北間の緊張が高まっている理由は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記が913日午後、ロシア極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で4年ぶりの会談を持ったことが大きなきっかけになっています。

 ロシアに対する北朝鮮の軍事協力の「可能性」について話し合ったことを、プーチン大統領は明らかにしました。
 ロシア政府は協力を得る見返りとして、北朝鮮の人工衛星開発を支援する意向を示しているのです。

 米国は北朝鮮とロシアの会談について、ロシアがウクライナ侵攻で使う武器を北朝鮮から購入するのが目的だと主張しましたが、ロシアと北朝鮮はこれを否定しています。

 金正恩総書記は軍事協力の見返りとして、高度な宇宙技術の提供のほか、食料援助も求めたと見られています。
 ロシア政府はウクライナ侵攻で使用する武器、とりわけ弾薬と砲弾を切実に必要としていますが、北朝鮮はそのどちらも多数保有しています。

 金正恩総書記がプーチン大統領に語った言葉に、「私たちは帝国主義との戦いで共にあり続けると、確信している」と述べた内容があります。
 米国と一体となって進む韓国に対して、ロシアと北朝鮮は一つとなって戦うという共同戦線の表明です。

 北朝鮮はロシアとの二国間関係を「最優先事項」にすると宣言しているわけです。
 偵察衛星の打ち上げ合戦もバイデンとプーチンのさや当てのようにも見えます。

 南北間がにわかに軍事緊張を高めています。
 果たして、半島情勢は波乱を含みながら暴発するのか、それとも南北平和統一の道を探るのか予断を許しません。