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青少年事情と教育を考える 243
長時間のメディア視聴が子供の発達に与える影響

ナビゲーター:中田 孝誠

 今回は、メディアの視聴時間が乳幼児の成長発達に与える影響についての研究を取り上げます。

 これまでも、メディアの視聴時間が長いと子供の発達に影響があるとの研究はありました。ただ、従来の分析方法では、「視聴時間が長いから発達が遅くなるのか」あるいは「発達が遅い子は視聴時間が長くなりやすいのか」が十分に分からなかったといわれています。

 そこで今回、千葉大学と国立成育医療研究センターの研究グループが、乳幼児期にテレビやDVDなどメディアを視聴した時間と子供の発達の関連について、発達の個人差などを調整した上で分析を行い、その結果を先月公表しました(この研究は、環境省が実施した「子どもの健康と環境に関する全国調査」のデータを用いています。対象は約5万8千人。メディア視聴時間は1日当たり「0時間」「1時間未満」「1時間以上2時間未満」「2時間以上4時間未満」「4時間以上」の5段階に分けています)。

 それによると、メディアの視聴時間が長いほど、その子の1年後の発達スコアが低くなる傾向にあることが明らかになりました。

 「発達スコア」というのは、①コミュニケーション、②粗大運動(走る、歩く、座るなど)、③微細運動(手先の器用さ、目や口の動きなど)、④問題解決(親からの指示理解など)、⑤個人−社会(スプーンの使用、服の着脱など)の五つの領域の質問に、「できる」「ときどきできる」「できない」を保護者が記入して得点化したものです。

 この中で特に、1歳の時に視聴時間が長いと2歳時点でのコミュニケーション領域に影響し、2歳時の視聴時間が長い子は3歳での粗大運動、微細運動、個人−社会領域の発達スコアが低くなっていました。

 逆に、コミュニケーションの発達スコアが高いと、1年後にはメディアの視聴時間が短くなる傾向があることも分かりました。
 また、研究では発達スコアを高くする育児環境の要因として、年上の兄弟の存在、保育園の利用、子供への読み聞かせを挙げています。

 研究グループは、子供がメディアを長く視聴する要因は何か、視聴時間を減らすために家族ができる方法は何かといったことは明らかにできていないと述べています。

 また、今回用いられた環境省の調査は2011年から2014年に生まれた子供を対象にしているため、当時それほど普及していなかったスマートフォンの影響を今後調査する必要があると指摘しています。

 いずれにしても、家庭での親子の関わりや兄弟関係、保育園での友人関係なども含めて、子供がメディアに触れる環境を考えることが大切であるということは言えそうです。