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平和の大道 43
ベーリング海峡トンネルの実現性

 皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
 同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
 Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!

佐藤 博文・著

(『平和の大道-国際ハイウェイ・日韓トンネル-』より)

鉄道中心の計画

 ベーリング海峡に海底トンネルを通し、極北の大地シベリアとアラスカを横断する高速鉄道を走らせる時が到来した。ベーリング海峡海底トンネル構想は地球規模の鉄道網を完成して世界経済発展の平準化を図る構想だ。

 鉄道建設は、高速道路と同様に効率的で生産的な国家建設には不可欠だ。それがより効果的になるためには、まず、交通の一般原則により、国内での連結、さらには、大陸内での連結、大陸間の連結が必要である。軌間(ゲージ)の統一も必要になる。鉄道の不連続部分の短縮が、経済開発のバランスを促進するようになることは歴史的事実である。

 シベリアとアラスカの開発の交通インフラは鉄道中心になる。極北という厳しい自然環境の中では、高速道路建設よりも、鉄道建設のほうが、建設コスト、保守・管理、自然環境への負荷、輸送エネルギーコスト等から見て、一段と優れているからである。国際ハイウェイ構想は、もちろん道路主体であるが、自然環境次第では、鉄道が主体にならざるを得ないことを否定するものではない。国際ハイウェイの主眼は高規格の交通システムの構築であるから、道路だけにこだわらない。

 故に、シベリアとアラスカを結ぶ交通手段としては、鉄道中心になる。この鉄道は北東シベリアのヤクーツクから南に向かって、中国や北朝鮮に連結される。日本にとっては、北海道から樺太に向かい、樺太から間宮海峡を横断してロシアにつながり、シベリアから南下する鉄道と連結する。こうすれば、東北アジアや日本列島とシベリア、アラスカを結び、アジアから陸路でアメリカ大陸に行くことを可能にする。

実現の可能性はあるのか

 実現性を決める要素は、必要性(ニード)、技術的可能性、国際的協力関係の可能性、採算性(コストとベネフィット)、資金調達等であるため、多角的に検討しなければならない。

 まず、技術的に可能であるかどうか見てみよう。海峡の幅はせいぜい87kmだ。世界で最も広大な陸地同士を繋ぐため、ベーリング海峡の下にトンネルを通すことは、青函トンネル、英仏海峡トンネルを成功させた実績から見て、既存の技術で可能である。故に技術以外の課題を検討しなければならない。

 20世紀初頭、シベリア横断鉄道と北米の鉄道網を連結させるトンネル・鉄道建設の目的で、「アラスカ・シベリア横断鉄道会社」という民間会社が設立された。当時のお金で600万ドルの資金が民間から調達され、1905年に予備調査が実施された。その結論として、ベーリング海峡鉄道トンネルプロジェクトの総予算を、当時の鉄道技術で3億ドルと見積もった。

 しかし、同プロジェクトは、その後立ち往生してしまった。その最大の理由は政治的なもので、こうした巨大な国際的インフラ計画に不可欠な関係諸国の全面協力を得られなかったことである。

 ソビエト連邦時代の69年間は、米ソ間の熾烈なイデオロギー闘争のせいで、両国を直接結ぶ鉄道という構想が現実味を帯びることは全くなかった。しかし、1991年にソビエト連邦が解体し、米ソの冷戦が終結した今、世界一の経済大国である米国と世界最大級の広大な国土と豊かな資源を持つ国であるロシアが、政治・経済協力をする上での障害はあまり見当たらなくなった。

5兆円の建設費

 1986年、チェコ生まれの米国人ジョージ・クーマルはアラスカを含む米国各州、カナダ、ロシアの夢追い人たちと一緒に、「半球間ベーリング海峡トンネル鉄道グループ」(IBSTRG)をアラスカの非営利団体として設立した。その狙いは、北米とアジアを結ぶ陸上交通の利点を研究し、一般向けに普及・啓蒙することだった。

 IBSTRGは、ベーリング海峡最寄りの鉄道起点ヤクーツクから北米のフォートネルソン(英領コロンビア州)までの4800マイルに鉄道を敷設するコストの試算をすべて終えている。4800マイルに単軌の電気化鉄道建設をするコストが120億ドル、トンネル建設(2本のトンネル)の初期費用が50億ドル、第3のトンネル建設費が90億ドル、4800マイルの鉄道敷設費が50億ドル、中国までの鉄道敷設費4050億ドルである。

 第3期工事が完了し、標準軌道の鉄道が中国に達するまでに最低410億ドルの工費が必要である。また工事費以外に、向こう10年間に1000両の機関車、120両の編成用車両、5万台の貨物車両を備えるために、さらに50億ドル、それ以外にも店舗や駅舎、管理施設等に10億ドルが必要だ。総予算は約470億ドル、日本円にして約5兆円になる。

日韓トンネル早期着工促進を

 ベーリング海峡海底トンネルが動き始めた。ロシア政府は2030年までに完成することを表明している。ロシア政府が本気になって取り組み始めたこの動きがこのまま進展すれば、日韓海底トンネルよりも先に建設される可能性が高まってきた。日本としては、宗谷海峡、間宮海峡に海底トンネルを建設する準備も必要になろう。

 日本と韓国の政府が日韓トンネル建設着工の決断をできないまま先延ばしするようになって、日韓トンネル建設着工が遅れれば遅れるほど、日本と韓国が、大陸間を繋ぐ世界次元の高速交通ネットワーク形成という現実世界の大きな潮流、世界の文明史、歴史の主流から後退していくであろう。ベーリング海峡海底トンネル建設が現実化しようとする現在、日韓海底トンネル建設が数年以内に国家レベルで決定されることが急がれている。

(『友情新聞』2015年1月1日号より)

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 次回は、「ベーリング海峡トンネルの地政学的考察」をお届けします。


◆『平和の大道 ―国際ハイウェイ・日韓トンネル―』を書籍でご覧になりたいかたはコチラへ(韓国語版もあります)


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