続・夫婦愛を育む 7
夫のワンオペ

ナビゲーター:橘 幸世

 Blessed Lifeの人気エッセイスト、橘幸世さんによるエッセー「続・夫婦愛を育む」をお届けします

 段差で転んで骨折、と耳にはしていましたが、自分には当分先の話と思っていました。
 遠方からの来客でバタバタ動いていた折、不覚にもわずか数センチの高低差に足を取られました。過去にもやっていた足首なので、今回も捻挫の診断が下ると思っていましたが、少し折れているとのこと。1カ月のギプス生活を告げられてしまいました。

 そのこと自体かなりショックでしたが、追い打ちをかけたのが、不自由さです。
 貸していただいた松葉杖をうまく使いこなせません。不器用な分、余分な体力を消費しているのでしょう。数メートルの移動も一仕事で、使える方の脚が筋肉痛を起こしています。

 これまで松葉杖を使っている人を見かけても、「けがしたんだ」くらいで、その大変さが全く分かりませんでしたし(若い人には大変ではないかもですが)、想像すらしてみませんでした。その立場になってみないと分からない、というのを改めて実感です。

 私の松葉杖で歩く様があまりに危なっかしいので、主人が会社に1カ月の在宅勤務を申請し、許可されました(基本出社勤務)。
 びっくりです。妻の足首骨折ごときで、と一昔前なら言われたことでしょう。このご時世ならではですね(社長さん自身が松葉杖生活を経験されたことも許可の要因となったのかもしれません)。
 私は申し訳ないこと限りなしです。
 主人が働きながら家事を(時に育児も)こなすことは、これまでも何度かありましたが、在宅では初めての経験です。

 主人が会社の人や取引先の人と電話で話すのが漏れ聞こえてきます。
 通常家では見ることのない一面に触れることができ、新鮮です。と同時に、定時を過ぎてもパソコンを打つ音が聞こえてきて、忙しさが肌で感じられます。

 そんな中、家事の面では、主人の負担を極力少なくすべく最低限のことだけお願いするようにしています。
 その際は、「都合のいい時に○○をしてくれるとありがたいんだけど」という言い方を心がけて。催促はしません。

 わが家では、手拭きタオルは台所用、洗面所用、トイレ用と3種類、基本的に色で区別しています。
 毎日替えたいので主人にお願いすると、長年使っていながら、その区別を主人は全く認識していませんでした。関心がないと言えばそれまでですが、やはり男性故なのでしょうか。

 以前にトイレの棚に敷く装飾用の紙を替えた時も、「何か変わったの、分かる?」と聞いても見当すらつきませんでした。
 ちなみに、洗濯後のタオルがしわっとなっていても何も言いません(干す時にピンと伸ばしていない)。清潔なのを使えるだけで感謝です。

 あれこれと忙しい主人とは対照的に、私の時間は人生初と言えるほど、ゆ~っくりと過ぎていきます。さて、どう有益に過ごしましょう?