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中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
  第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

第14回「人工妊娠中絶」について考える

(中和新聞 2022年722日 通巻1481号より)

 このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回は「人工妊娠中絶」について考えます。

 米国で「人工妊娠中絶」は、世論を二分するテーマだと言われ、中絶反対派は「Pro-Life(生命尊重)」、中絶賛成派は「Pro-Choice(女性の選択権尊重)」と呼ばれています。米国ギャラップ社の20215月の世論調査によると、「Pro-Choice」が49%、「Pro-Life」が47%で、両者の割合は1990年代後半から一貫してほぼ同じだといいます。

 そのような米国で2021624日、連邦最高裁判所による「歴史的」な判断が下されました。

■米最高裁、「中絶の権利」認めず
 今回の裁判では、ミシシッピ州で2018年に制定された中絶を規制する法律が、憲法に違反するかどうかが争われました。ミシシッピ州の州法は、医療の緊急性がある場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止するもので、それを民間クリニックが「違憲」だと訴えたのです。

 米国では、1973年の「ロー対ウェイド」判決と呼ばれる最高裁判決以降、人工妊娠中絶が憲法上の権利として認められてきました。73年の判決では、「女性が妊娠を中絶するかどうかを選ぶのは、個人のプライバシーに含まれる」と、「プライバシーの権利」が重視されました。

 それ以降、約50年にわたって維持されてきたこの判決が、今回の判断で覆されることになりました。9人の判事のうち、保守派の5人が「中絶の権利は憲法に明記されていない」と指摘し、「ロー対ウェイド」判決は「最初から著しく間違っていた」と批判。「中絶の是非は各州の判断に委ねるべきだ」との見解を示したのです。

 ミシシッピ州の州法を「合憲」と判断した今回の判決ですが、中絶を全ての州で禁止すべきだと言ったわけではありません。「憲法に従い、中絶問題は米国民に選ばれた代表(州議会)に返すべきだ」(アリート判事)との見解を示したのです。

 中絶に反対する学生グループの一人が、「歴史的な日を迎えることができて、とてもうれしい」と歓喜の声を上げる一方、首都ワシントンの連邦最高裁前をはじめ、全米各地では抗議のデモが行われました。

 今回の判決を受け、ケンタッキー州、ルイジアナ州、サウスダコタ州で中絶禁止法が施行され、さらに10州で中絶を実質的に禁じる州法が発効されると見られます。中絶の権利を支持する調査団体「ガットマッチャー研究所」は、全米50州のうち26州で中絶を禁じたり、極めて厳しく規制したりする可能性があると警戒を強めています。民主党のバイデン大統領は、「今回の判断は結論となるべきではない」と演説するなど、中絶の権利擁護を訴えています。202211月に中間選挙を控える米国では、今回の判決によって国内の分断がより一層深まることが予想されます。

■中絶の規制緩和の動き、日本は?
 一方、「世界では中絶の規制が緩和に向かっている」(朝日新聞2022626日付朝刊)ともささやかれています。中絶反対のカトリック信者が多数派を占めるアイルランドでも、2018年に国民投票で中絶が合法化されました。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルによると、この25年間で、50か国以上の国で中絶の条件が緩和されたといいます。

 では、日本ではどうなのでしょうか。202112月、英国の製薬会社ラインファーマは、中絶のための経口薬の製造販売の承認を厚生労働省に申請しました。安全性や有効性の審査を経て、早ければ1年以内に承認、実用化される見込みで、飲む中絶薬としては国内初となります。年内には実際に手に取ることができる段階まで来ているのです。世界保健機関(WHO)は、ガイドラインの中で飲み薬を「安全で効果的な中絶法」の一つとして推奨し、すでに80以上の国と地域で承認されています。WHOによると、中絶薬の平均価格は「約740円」で、国内ではいくらで販売されるのかも注目されています。

 日本での中絶は、現在も主に「掻爬(そうは)法」という、リスクが伴う手術法で行われ、10から20万円ほどかかります。それが千円札1枚程度の飲み薬で対処できてしまうのです。中絶を望む女性にとっては、これほど簡単で便利なことはないでしょう。このように中絶が簡便になってしまうことの弊害を、私たちは真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

 厚労省が発表した2020年の人工妊娠中絶数は145340件。1989年の466876件に比べると、3分の1以下になっていますが、それでも年間に15万件弱の中絶が行われているのです。このうち、10代の中絶数は約11000件。これも決して少ない数とは言えないでしょう。全国で一日当たり、30人もの10代の女性たちが中絶に臨んでいるのです。今後、安価な飲み薬が広まることによって、10代や20代の中絶件数がさらに増加することが危惧されます。

 日本の多くの国民は、米国の「中絶反対派」であるキリスト教徒のように、胎児から霊魂を持つなどとは考えていないでしょう。さらに昨今では、フェミニストを中心に「私たち(女性)の体は私たちのもので、自分のことは自分で決めればいい」といった「性の自己決定権」がしきりに叫ばれています。中絶にも「女性の尊厳」が強く主張される中、「胎児の尊厳」が忘れ去られていないでしょうか。

 人間の生命とは本来、“神聖なもの”であるはずです。私たちの「性」と「生(命)」をどのように捉え、考えるのか──。「人工妊娠中絶」の問題は、私たちに今も非常に重い問いを投げかけ続けているのです。

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 次回は、「『家庭連合への批判』について考える(上)」をお届けします。

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