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青少年事情と教育を考える 223
家庭や地域での体験活動

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、子供の頃の体験活動が多いほど、将来の結婚や子育ての意欲を高める可能性があるという調査を紹介しました。

 他にも、親子参加型の自然体験が将来親になった時の養育態度に良い効果があると考えられること、また母親の過去の自然体験が2人目や3人目の子供を持ちたいと希望する気持ちに影響を与えている可能性がある、といった研究もあります(『母親の過去の自然体験及び自然体験に対する肯定的思考が次子の出産動機に及ぼす影響について』他)。

 ただ、この3年間は新型コロナウイルス感染症の影響で、運動会や修学旅行をはじめ学校での体験活動が減少しました。
 これに対して、体験機会の減少を解消するための取り組みも始まっています。

 こうした取り組みを進める中室牧子・慶應大学教授によると、体験活動への親の時間的投資が子供の認知能力や非認知能力を高めるという研究があります(「教育新聞」2月27日付)。

 また、最近は家庭の経済事情による子供の体験格差も指摘されています。
 それでも希望があるのは、体験活動は決して特別のことではなく、日常生活の身近な体験も含まれるということです。

 例えば、「夜空いっぱいにかがやく星をゆっくり見た」(自然体験)、「チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと」(動植物とのかかわり)、「かくれんぼや缶けりをした」「ままごとやヒーローごっこをした」(友だちとの遊び)、「家族の誕生日を祝った」「家族で家の大掃除をした」(家族行事)、「食器をそろえたり、片付けたりする」「家の中の掃除や整頓を手伝った」(家事手伝い)、「近所の小さい子どもと遊んであげた」「地域清掃に参加した」(地域活動)なども大切な体験活動とされています(これらは国立青少年教育振興機構『若者の結婚観・子育て観等に関する調査』で用いられた体験の項目です)。

 子供と一緒に夜空の星を見たり、野鳥の鳴き声を聞けるようにする。こうした機会を持てるように家庭を支援することも、体験格差を解決することになるのではないでしょうか。