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青少年事情と教育を考える 222
子供の時の体験活動と結婚・子育て願望

ナビゲーター:中田 孝誠

 昨年1年間の出生数が初めて80万人を下回ったことが公表されました。

 昨年の出生数は79万9728人(速報)で、前年から4万3千人余り減少しました。また、死亡数は過去最多の158万2033人(同)となり、この1年間で人口が78万2千人も減少したことになります。これも過去最大です。少子高齢化の深刻な事態が突きつけられたと言っていいでしょう。

 岸田首相は、次元が異なる少子化対策を強調し、児童手当をはじめ子供予算の増額が議論になっています。
 それは必要だとしても、同時に、これまでの少子化対策の成果の検証もなされるべきだと思います。

 また、出産適齢期といわれる20〜30代の女性の数も減少していますから、少子化の現状をすぐに変えることは困難です。
 それでも、将来を見据えての対策に取り組んでいく必要があります。

 少子化の大きな要因として、一つには若者の未婚化が指摘されています。
 それに関して、以前、本欄で高校生などを対象にした「ライフデザイン教育」や「婚学」について紹介したことがありますが、今回は興味深い調査を紹介したいと思います。

 少し前ですが、国立青少年教育振興機構が2016年に自然体験などの体験が多い人ほど結婚や子供を持つことに積極的だという調査結果を発表しています。対象は20代〜30代の男女です。

 それによると、小学生の時の「自然体験」「動植物との関わり」「家族行事」「友達との遊び」「地域活動」などの体験が多かった人は「結婚している」という割合が49.5%と半数に達し、体験が少ないという人は33.4%でした。
 未婚であっても体験が多い人は「結婚したい」が83.3%、体験が少ない人は63.8%でした。「子供が欲しい」という回答も、おのおの75.6%、57.1%でした。

 もちろん、こうした体験を増やせば少子化問題が解決するという簡単な話ではありません。
 ただ、体験活動は子供たちの規範意識や意欲を育むといわれますが、現代はその環境も機会も減少しています。生まれてきた子供たちが幸福に育つ家庭や地域の環境をつくっていくことが、少子化の解決にもつながるということかもしれません。