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中和新聞セレクト Vol.7
家庭力アップ講座 6

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
 第7弾は「家庭力アップ講座」(多田聰夫氏)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。
 同コンテンツは『中和新聞』20137月~20163月に全19回で配信されたシリーズです。

第6回 家庭の目的をもとう(2)

(中和新聞 2014年4月11日 通巻656号より)

[第2章]心の姿勢 家庭の目的をもとう <2>

子供の行動だけを変えようとする親
 前回に続き、家庭の目的について考えたいと思います。

 「何でも言い合える家族」「笑顔の絶えない家族」「思いやりのある家族」など理想とする家族の姿(目的)を描いてみましょう。家族皆でその目的を共有すれば、一人一人の心の中に理想家庭の種(動機)を植えることができます。そこから、より良い家族関係が生まれてくることでしょう。

 理想とする家族の姿に向かっていこうとするとき、親は子供の問題のある行動を変えさせたいと思うかもしれません。

 朝、なかなか起きてこない子供に対して「早く起きなさい」と言ってみたり、勉強に取り組めない子供に「テレビばかり見ていないで勉強しなさい」と叱ってみたり、教会に行きたがらない子供を教会に行かせようとしたり…。

 親が子供の行動を変えさせようとしても、なかなか子供は言うことを聞きません。そのような姿を見れば、親は苛立ったり、子供に怒りをぶつけたり、「悪い子」だと決めつけてしまったりするかもしれません。

子供の気持ちを理解してみよう
 親は、子供の行動だけを変えようとしがちですが、子供の気持ちを理解しようとしてきたでしょうか。朝なかなか起きてこない、勉強に手がつかない、あるいは教会に行きたがらない、そんな子供たちの気持ちを理解しようとしたことがあったでしょうか。

 親が子供の気持ちを理解し、さらに共感することができたとき、初めて子供は行動を変え始めることが多いのです。

 スティーブン・コヴィー氏の著作『7つの習慣ファミリー』にはこのような例が紹介されています。その一つが以下のような内容です。

 息子との関係がうまくいっていない父親がいました。彼は息子に対して「反抗期で感謝の気持ちを一切表さず、いつもふてくされている」と決めつけていて、息子を責めていました。

 相談役のコヴィー氏から、「息子さんは、あなたに理解されていないと感じているのではないか」との指摘を受けても、その父親は「息子のことは十分に分かっている。息子が私の言うことを聞けばうまくいくはず」と強情でした。

 しかし、コヴィー氏の「裁いたりせず、息子さんの言うことを聞いてみてはどうか」との粘り強い説得により、父親は息子の話に耳を傾けようとしたのです。

 それで父親は、「お前の話を聞こう」と言いながら息子に接するのですが、息子の行動を変えたいという動機は変わっていませんでした。その結果、上辺だけの言動を見抜いた息子から、さらなる反発を受けたのです。

 それで落ち込んだ父親は、もう一度コヴィー氏のアドバイスを受けました。
 「あなたの心は、裁く気持ちでいっぱいなのです。上辺だけでなく、心の中から働きかけなければなりません。そうすれば、無条件に息子さんを愛することができるようになるはずです」

 父親は自分の内面を変える努力をしていなかったことを悟り、今度は誠心誠意、息子を理解し、話を聞こうと努力しました。そうするうちに父親は、自分が本当の意味で息子を理解しようとしてこなかったことに気づき、過去のことを息子に謝罪します。

 「この前、友達の前で恥ずかしい思いをさせて悪かった。ごめんよ」

 すると息子は涙を目に浮かべました。それを見た瞬間、父親の心に衝撃が走ったそうです。父親は、息子の心が傷つきやすく、感受性が豊かであることに気づき、息子の話を聞きたいと思うようになりました。

 その後、父親と息子の心が通うようになり、息子は、今まで話すことがなかった様々な思いを父親に打ち明け、その日の明け方まで話し続けて、父子が和解に至ったというものです。

親の愛が子供に届くための2つのポイント
 葛藤していた父子が見事に一つになる話です。この事例で、転換のポイントはどこにあったのでしょうか。基本的なポイントを解説します。

 第1のポイントは、父親が「自らを変えること」ができたことです。

 初め父親は、息子のことを全て分かっていると思い込んでいました。そして息子に問題があると考え、信頼していませんでした。しかし、息子との葛藤について相談したコヴィー氏のアドバイスを通して、「自分は息子のことを全く分かっていなかった」ことを自覚できたのです。

 第2のポイントは、父親が息子を「信頼し、愛すること」ができたことです。

 父親は、コヴィー氏の指摘を通して自分の動機が間違っていたことに気づきます。そして、「息子を変えたい」と願うのではなく、「息子のことを心から理解したい」という思いをもてるように、自分の内面が転換されました。この父親の気持ちが息子の心に届いたのです。そして父親は、息子を信頼し、愛することができるようになったのです。

 簡単なことではありませんが、この例を通して、親の愛が子供に届くポイントを学ぶことができます。このような点に留意しながら、諦めることなく、前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。

 親自身が自覚し、自分を変える努力をするだけでなく、家庭同士が絆を深めることで、心を軽くすることができます。自らの努力と家庭間の絆や信頼関係が大きな力となることでしょう。

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 次回は、「一時停止ボタン」をお届けします。

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