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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

34回 障がい者福祉編⑯
娘は統合失調症なのですが、副作用や薬漬けにならないかが心配です

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。

 今回は、「娘が統合失調症だと診断されました。医師からは薬を飲むように言われたのですが、副作用や薬漬けにならないかが心配です」という質問にお答えします。

 統合失調症は、脳内神経伝達物質のバランスが崩れて発症するといわれています。

 統合失調症と診断された人は、ほとんどの場合、服薬を勧められると思います。統合失調症に対する治療法は他にもないわけではありませんが、やはりメインは服薬治療となります。

 統合失調症の治療薬を「抗精神病薬」といいますが、抗精神病薬の服用に対して抵抗感を持つ人が多くいます。その理由の一つは副作用でしょう。

 抗精神病薬の副作用には、日中の眠気や喉の渇き、めまい、便秘、不整脈、体重増加、手の震えなどさまざまなものがありますが、出方は人それぞれです。高熱が出たり、血圧が上昇したりしてしまう悪性症候群というものもあり、これが出た場合はすぐに医師に相談して薬を替えてもらうなどの対応をする必要があります。

 また副作用だけでなく、薬の量がだんだん多くなって、薬漬けになってしまうのではないかと不安になる人も多いようです。

 過去においては長期入院生活を強いられる人も多かったため、「精神科に行くと、薬漬けになり、一生入院生活になる」というイメージがあるのかもしれません。ただ、ご本人やご家族のそのような不安は理解できますが、以前とはずいぶん状況が変わっているということも理解しておくべきかと思います。

 32で詳しく説明しましたように、法的な整備が進んできたことにより、入院患者数は減少傾向にありますし、入院期間も、特に若い人は長期化させないようになってきています。

 そして以前と状況が変わった点としてもう一つ、近年、優れた薬が開発されてきたことが挙げられます。

 抗精神病薬には、2000年以前に多く開発された「定型抗精神病薬」と、2000年前後から多く作られるようになった「非定型抗精神病薬」があります。定型抗精神病薬を第一世代、非定型抗精神病薬を第二世代と呼ぶこともあります。

 第一世代の薬が陽性症状にのみ効果があったのに対し、第二世代は陰性症状や認知機能障害にも効果が確認されています。また第二世代の方が副作用が軽く、再発率もやや低いといわれています。
 もちろん第二世代でも副作用がないわけではありませんし、薬の効果の現れ方は人によって違うため、第一世代の薬を使うのが有効な場合もあります。しかしいずれにしても、有効な薬の選択肢が増え、治療法が確実に進歩していることは間違いありません。

 薬の量が多くなったり、入院生活が長くなったりするのは、薬の効果が薄く、症状がなかなか改善されないことが一因です。逆に言えば、薬の効果が高まって症状改善が早くなれば、その分、早く退院できるということにつながるのです。

 統合失調症は、早期に発見し、服薬治療を開始することが重要です。治療開始が遅れれば遅れるほど、病前の状態に戻ることが困難になります。

 また、少し状態が収まったからといって勝手に怠薬・断薬をしてしまうと、病気が再発・再燃してしまいます。その後、服薬を再開したとしても、病気が進行してしまっていると、完全には元の状態に戻れなくなってしまう可能性があります。

 そのような意味で、服薬管理がとても重要です。

 ご本人が定期的に服薬することに困難を感じているのであれば、持続性注射剤(デポ剤・LAI)を注射するという方法もあります。1回の注射で24週間効果が持続するため、毎日服薬する煩わしさがなく、飲み忘れ、飲み間違いを防止する効果もあります。

 服薬についての不安がある場合は、主治医に率直に相談してみられたらよいと思います。

 それでは、今回の講座はこれで終わりにさせていただきます。