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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

33回 障がい者福祉編⑮
統合失調症とはどのような病気なのでしょうか?

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。

 今回は、「知人が統合失調症と診断されました。統合失調症とはどのような病気なのでしょうか?」という質問にお答えします。

 「統合失調症」とは、脳内の精神機能のネットワークがうまく働かず、感情や思考をまとめることができなくなる病気です。
 かつては「精神分裂病」と呼ばれていましたが、その名称だと精神が分裂して理性が崩壊する病気のように捉えられる可能性があるため、現在では差別語であるとして使われなくなりました。

 統合失調症は10代後半から30代ぐらいまでに発症することが多く、有病率は約1%といわれています。100人に1人ぐらいの割合でかかるということですから、決して珍しい病気ではありません。

 統合失調症の原因はまだ解明されていませんが、ドーパミンなどの脳内神経伝達物質のバランスが崩れて発症するといわれています。

 バランスが崩れてしまう要因として、①その人が元々持っている生物的脆弱(ぜいじゃく)性と②過度なストレスがかかる環境的要因の両方が指摘されています。つまり、統合失調症になりやすい遺伝的要素や気質を持った人が大きなストレスを受ける環境に直面したときに発症しやすいということです。これを「ストレス・脆弱性モデル」と呼んでいます。

 統合失調症の症状は大きく分けて、①陽性症状、②陰性症状、③認知機能障害の三種類です。

 まず陽性症状には、幻覚、妄想、解体した会話などがあります。

 幻覚とは実際にないものをあるように感じることで、視覚や聴覚、嗅覚、触覚など、さまざまな感覚で現れますが、特に多いのは実在しない人の声が聞こえる幻聴です。

 妄想は非現実的なことやあり得ないことを信じ込むことで、例えば、周囲の人が自分の悪口を言っている、いつも誰かに見張られているなどと思い込む被害妄想や、自分は有名人の子どもだ、自分には特別な能力があるなどと思い込む誇大妄想などがあります。

 解体した会話というのは、会話が支離滅裂になって、周囲の人が理解できなくなることです。

 これらの陽性症状は統合失調症の代表的な症状なので、ご存じのかたも多いかもしれません。

 次に陰性症状には感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如、自閉などがあります。

 感情の平板化とは、単なる気分の落ち込みではなく、感情そのものの表現が乏しくなることです。他の人の気持ちに共感することが少なくなり、外界への関心を失っているように見えます。さらに思考力が低下し、意欲も欠如するようになります。そしてコミュニケーションに支障を来し、自分の世界に閉じこもる、すなわち「自閉状態」になります。

 これらは全て統合失調症の陰性症状です。

 三つ目の認知機能障害は、陽性症状や陰性症状が現れた後、回復期に出ることが多い症状です。

 認知機能というのは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的能力のことですが、それが低下して障がいが生じるということです。具体的には記憶力や判断力が低下し、注意力や集中力も減退します。その結果、料理や整理などを効率よく、手順立てて行うことができなくなったりします。

 統合失調症の治療は、薬物療法が基本です。どのような薬をどのくらいの量、服用すべきかは人によって違います。

 基本的には、複数の抗精神病薬を服用する多剤併用療法ではなく、一種類の抗精神病薬を適量服用する単剤療法が推奨されていますが、自分で判断するのではなく、主治医の指示に従うことが重要です。少し症状が治まったからといって、決して自分勝手に服薬をやめたりしないでください。疑問や困ったことがあれば、すぐ主治医に相談してみてください。

 統合失調症は、完治は難しいといわれますが、早期に発見し適切な服薬治療を行えば、病前の状態に近いところまで回復することは十分可能です。症状が出たら、ためらわず医療機関を受診するのがよいと思います。

 それでは、今回の講座はここまでにさせていただきます。