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愛の勝利者ヤコブ 6

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「愛の勝利者ヤコブ」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 どの聖書物語作者も解明し得なかったヤコブの生涯が、著者の豊かな聖書知識と想像力で、現代にも通じる人生の勝利パターンとしてリアルに再現されました。(一部、編集部が加筆・修正)

野村 健二・著

(光言社・刊『愛の勝利者ヤコブ-神の祝福と約束の成就-』より)

アブラハムの召命②

 その地に住んでいたカナン人は(それ以外の地の住民も同じようなものであったが)自然や偶像、迷信を信じ、物質的な快感や安逸をむさぼる人々ばかりであった。その中でただひたすら天地の造り主──神のみを信ずるアブラム(のちのアブラハム)は周囲のだれからも理解されず、ひたすらじっと孤独に耐えていかなければならなかったようである。

 その後、カナンの地が飢饉となったので、一族を養うためエジプトにまで下らざるをえなくなった。そこで妻サライが絶世の美女であるため、エジプト王パロが自分を殺して妻を奪おうとするのではないかと心配して、妻を自分の妹だといつわって難を逃れようとする。いろいろ苦労をしたのち、再びネゲブを通ってベテルとアイの間の、先に天幕を張った所に戻った。

 ところでアブラムもロトも多くの羊や牛、らくだを持ち、その一帯の草原だけでは家畜の飼料に不足が生じ、アブラムとロトの牧者の間で争いが生じるようになった。

 そこでアブラムはロトを呼び、天幕に近い小高い丘に登った。そして、争いが起こらないようその丘の先に広がっているヨルダンの低地を二つに分け、互いに犯し合わないようにしよう、ついてはどちらの方が欲しいかと、ロトに選択権を与える。ロトはその低地をくまなく見渡した。東はヨルダン川に沿って谷があり、緑におおわれて肥沃(ひよく)であり、当時繁栄を誇っていたソドムとゴモラの町々につながっている。一方、西方は川から遠ざかるにつれて土地は荒れ、一見して地味の悪いことが分かった(*1)。

 そこでロトは東を選んで天幕をソドムの町に移し、アブラムは残りの西方のやせ地、カナンを選んだ。この選択は神のみ意(こころ)にかなったようである。ロトの一行が新しい天幕へと去ってしまうと、神はアブラムに声をかけられた。

 「目をあげてあなたのいる所から北、南、東、西を見わたしなさい。すべてあなたが見わたす地は、永久にあなたとあなたの子孫に与えます。わたしはあなたの子孫を地のちりのように多くします。…あなたは立って、その地をたてよこに行き巡りなさい(*2)」(創世記131417)。

 この啓示に心からの感謝をささげつつ、アブラムは天幕をヘブロンにある「マムレのテレビンの木」のもとに移し、そこに主(創造主ヤハウェのこと)の祭壇を築いた。


*注:
1)犬養道子『旧約聖書物語』、新潮社、1522頁の時代考証参照
2)エルサレム版のフランス語訳、ラテン語訳、キング・ジェームズの英語訳、ロナルド・ノックスの英語訳などを参照したという犬養道子(彼女はカトリックである)の訳では次のようになっている。この方がはるかに格調の高い名訳だと私は思う。
 「眼をあげよ、アブラム
 北と南を、東と西を、眼をあげて見よ。
 見わたすかぎりの地はすべて、
 おまえとおまえの子孫のもの。
 立て、心ゆくままに、いま見る限りの土地の上を歩め。…」(前提書22頁)

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 次回は、「天地の祝福と献祭①」をお届けします。