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【B-Life『世界家庭』コーナー】
トムヤムクンを召し上がれ

バンコク生活記⑨
刺激的な美容室だった!?

 2013年から2014年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』に掲載された懐かしのエッセー「トムヤムクンを召し上がれ バンコク生活記⑨」の一部を、特別にBlessed Lifeでお届けします!

 筆者のアルンローッゴーソン真理子さんは、6500双のタイ日家庭です。

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 タイに来て間もない頃、美容室に行きました。美容室といえば、まずシャンプーですが、これがものすごく刺激的だったので忘れられません。

 シャンプー台(寝台にちょっと角度がついた程度)に横になる?と、いきなりすごい勢いで水シャワーを頭にザーッとかけられ、ビックリしました。でも、タイは暑いし、基本的にお風呂は水シャワーだしと納得しました。

 ただ、顔にタオルをかけてくれるでもないため水は飛び散り、極め付きは爪を立てて引っかくように何度もシャンプーするのです。「ああ、頭皮が〜、キューティクルがなくなる」とパニックになりました。思わず手を挙げて「指の腹で洗ってください」とジェスチャーで伝えると分かったらしく、その後は優しく洗ってくれたのです。

▲顔にタオルもかけず、器用にシャンプーする近代的な美容室。最近は、シャンプーが気持ちいい

 ところが、今度は耳にシャンプーの泡が迫ってきたのが分かりました。まるで水中に潜っているときのような音が聞こえて、ご丁寧に耳を指で洗い始めたため、さすがの私も耐え切れず、全身で抵抗し、やめてもらいました。

 実は、先輩から「タイのシャンプーはすごいわよ!」と聞かされてはいたのですが、実際に体験してみると想像以上で、緊張のしっぱなしでした。シャンプーが終わると大きな溜め息が出たのを覚えています。

 日本で美容室に行ったとき、シャンプーが気持ち良くて、うとうとするほどだったのですが、国が違えばこうも違うということに戸惑いました。

 しかし、うれしいこともありました。それは値段の安さです。当時は女性で70バーツから100バーツ(約400円)。男性の散髪代は30バーツくらいでした。女性はシャンプーとブローだけなら30バーツと破格値でした。(※)


※1994年当時、タイの最低賃金(日給)は132バーツ

 肝心のカットですが、私は人差し指を出して「1センチくらい切ってください」と伝えたはずなのに3センチ近く切られました。タイはインチをよく使うので、1センチが1インチ(2・54センチ)と解釈され、そのようになってしまったようなのです。

 まあ、こんなことで落ち込んでも仕方がない、髪の毛はまた伸びてくると思って乗り越えましたが、数か月もすると同じ髪型も飽きて別の美容院に行きました。

 そして、ヘアカタログを見せながら「コレだ!」と言わんばかりにお願いしたのです。ところが、結果は全く違う髪型に……。

 日本でも多少の違いはあると思うのですが、ここではかなり美容師の主観が入っており、よく見れば、その美容師と同じような髪型になっていました。「なーんだ。こういうヘアスタイルが好みなんだ」と納得するよう努力しました。

 ただ、許し難かったのは後頭部をオジ様刈りみたいに短くされたことです。職場のみんなからは「どうしたのそれ? 短いわね」と笑われ、しばらくは皆さんに話題を提供することができました。

 時は流れ、今は「日系美容室」という強い味方があふれんばかりです。当時も数軒あったのですが、とても敷居が高かったのです。やっと納得価格になり、カットも安心してお願いできるので、私は行くようになりました。でも、長年おつきあいしてきたタイ人の美容室には、タイ生まれの子供だけお願いしています。

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(この記事は、『トゥデイズ・ワールド ジャパン』2014年2月号に掲載されたものです)