https://www.kogensha.jp

【B-Life『世界家庭』コーナー】
トムヤムクンを召し上がれ

バンコク生活記⑩
臭くておいしい「ドリアン」様 !?

 2013年から2014年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』に掲載された懐かしのエッセー「トムヤムクンを召し上がれ バンコク生活記⑩」の一部を、特別にBlessed Lifeでお届けします!

 筆者のアルンローッゴーソン真理子さんは、6500双のタイ日家庭です。

――――――――――――

 日本にいるときは、果物の世界にも王様と女王様がいるとは、想像すらできませんでした。が、タイに来て果物の王様が「ドリアン」、女王様が「マンゴスチン」と知りました。

 タイに嫁いで数日後、ある先輩家庭のお宅に招待され、「タイに来たからには、これを食べないとね」と準備してくださったのがドリアン。外敵を寄せつけないようなトゲトゲした硬い外皮で覆われており、「さすが王様、ドリアン様! さぞかし中に素晴らしい物が入っているのだろう」という期待でいっぱいでした。

 分厚い外皮を包丁で割ると、クリーム色の塊が幾つかありました。その頃、すでに部屋中に怪しげな臭いが漂っていて、プロパンガスでも漏れているのでは?と思っているうちに、「どうぞ召し上がれ」と出されたのです。

 先輩から興味津々に「どう? 臭いは?」と尋ねられ、本当はただ「臭い!」の一言に尽きるのですが、何とか婉曲(えんきょく)に表現しようと、必死で「生ゴミみたいな臭いがしますね」と感想を述べました。

 そして、勇気を出して食べてみたら、カスタードクリームのような味で、おいしくて完食してしまいました。先輩から、「よく全部食べたね」と褒められ、自分でもあんな臭い物をよく食べたなと思ったのですが、考えてみれば、日本にも臭くておいしいものがありました。

 幼い頃、私は納豆、メザシ、数の子が嫌いでした。どれも臭いが嫌だったのです。しかし、いつ頃だったか勇気を出して食べてみると、そのおいしさにびっくりして、「それまでの人生、損をした」と後悔したものです。

 ですから、ドリアンもとにかく食べてみました。今では、すっかり私の大好物です。年中ありますがドリアンの旬は5から6月。丸ごと買うより、中の塊のパック詰めを買うのが一般的です。100グラムで約50バーツ(150円)と手頃な値段がうれしいです。

 ちなみにドリアンはホテルやエアコンバス、タクシーへの持ち込みは禁止です。それだけ臭いが強烈ということです。

▲タイの選りすぐりが集まるオートーコー市場。すごい早技でドリアンをさばく女性

 ところで、初めてドリアンを食べたその日は、体が熱くなって寝つけずに苦しみました。翌朝、そのことをタイ人に話したら、「そうそう、マンゴスチンと一緒に食べればいいんだ。マンゴスチンが体が熱くなるのを防ぐんだよ」と教えられました。マンゴスチンは体を冷やす作用があるので、王様を助ける女王様ということです。

▲マンゴスチン

 それから、ドリアンを食べるときは、アルコールは禁物です。ドリアンチップスという菓子もあるのですが、それでもやめたほうがいいようです。食べ合わせが悪いのか、熱くなりすぎるのか、死ぬかもしれないと言われています。

 タイで暮らすようになって、真の父母様もドリアンがお好きだと知り感動しました。リーダーが訪韓した際、お父様が「ドリアンを持って来たの?」と尋ねられたという逸話もあるほどです。ですから、ドリアンの原産国はマレーシアですが、タイのメンバーは、タイのドリアンが「世界一おいしい!」と自信満々です。

――――――――――――

(この記事は、『トゥデイズ・ワールド ジャパン』2014年3月号に掲載されたものです)