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中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
  第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

第12回「性教育」について考える(中)

(中和新聞 2022年3月15日 通巻1444号より)

 このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回は、前回に引き続き、「性教育」について考えます。

 前回言及したように、現在でも2000年代に問題視された過激な性教育やジェンダーフリー教育と本質的にはさほど変わらない性教育が、「人間と性教育研究協議会」(性教協)などによって推進されています。

 「性教協」発起人の一人であり、現在もその一員である村瀬幸浩氏は、自慰行為を「セルフプレジャー」と言い換え、子供たちに「うしろめたいことでも悪いことでも全くないからね」「(マナーを守っていれば)1日に何回しても大丈夫」などと推奨しているのです。

■知識偏重の性教育で問題は解決できるのか
 精神科医の和田秀樹氏は、「週刊ポスト」(20211210日号)の「性教育」に関する特集記事の中で、次のようなコメントを寄せています。

 「性とは、誰にでも目覚めると歯止めが利かないものです。もし、中学生の頃から性教育をたたき込まれていたら『正しくやれば大丈夫』と思い込んで、とんでもなく奔放な人生になっていたかもしれません」

 疫学者である津田塾大学教授の三砂ちづる氏は、2000年代初頭に自身の著書の中で、次のように警鐘を鳴らしていました。

 「今、保健医療の場では『健康教育は知識を増やすけれども、行動変容は生み出さない』と言われています。たとえば、エイズ予防のためにはコンドーム使用が重要であることは、今は誰でも知っていると思いますが、……知識を持っているということと、……行動を起こすことの間には、大きなギャップがあるのです。知っていても、やらない。つまり、知識は行動の変革に結びついていません」

 ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、デイヴィッド・ブルックス氏も、「たとえ知識を大量に積み上げても、それで人の行動を変えられるわけではない。……行動を変えるには、意識の向上が必要だが、それだけでは十分ではない。……コンドームを提供すればいいというものではない。……入手できても、実際に使うかどうかは別問題だ」と、三砂氏と同様の主張をしています。

 さまざまな分野の識者が指摘しているように、コンドームなど避妊具の使用法や性に関する“知識”を教え込むことによって、子供たちの行動を変え、問題を解決できるといった単純な話ではないことを、まずは心に留めておく必要があるでしょう。

 私たちがさらに問題視すべきなのは、「性教協」などが推奨する「セルフプレジャー」(自慰行為)が子供から大人にまで及ぼす深刻な影響についてです。

■世界的に問題視される「インターネットポルノ中毒」
 自慰行為をするうえで、通常は写真や動画など「ポルノグラフィ」(以下、ポルノ)が閲覧・視聴されます。特にスマートフォンが普及した2010年代以降、誰もが簡単に視聴できる「インターネットポルノ」が世界的に問題視されつつあります。

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 20213月、日本で『インターネットポルノ中毒』(ゲーリー・ウィルソン著、原書は2015年)が邦訳出版されました。米国の病理学、解剖学、生理学の専門家である著者は、本書の中で次のように訴えています。

 「悲しいかな、子供たちに『よいポルノ』さえ教えれば問題が防げるとか、今日の過剰刺激環境に備えられるとかいう科学的な証拠は微塵も存在していない。そうした考え方は、むしろ何百ものインターネット中毒に関する脳科学研究や、インターネットポルノ利用の研究に逆行している」。そのため、「ポルノ、特にオンラインポルノが無害だという広く普及した見方は早急に改められるべきだ」というのです。

 本書の出版を受け、日本の週刊誌や実話誌でも、「インターネットポルノ中毒」の問題がたびたび取り上げられるようになりましたが、ここではその問題点を完結に列挙したいと思います。

・厄介なのは、無料でいくらでも摂取(視聴)できてしまうこと
・「視聴をやめたい」と願っているが、自分の意思ではやめられない(中毒)
・スマホでポルノ動画を延々と見てしまい、仕事や生活に支障をきたす
・うつ病を患うケースもある
ED(勃起不全・勃起障害)を招く
・セックスレスにつながる

 日本のある調査では、「セックスはしないが射精はする」と答えた男性は、なんと4割にも上るといいます。米国の著名な泌尿器科医ハリー・フィッシュ氏が指摘しているように、「ポルノがセックスを殺している」とも言えます。「インターネットポルノ中毒」は個人に悪影響を及ぼすだけでなく、将来の結婚や家庭を築く際の障害にもなり、日本でかねてから問題視されている少子化をさらに加速させる大きな要因にもなってしまうのです。

 また、『グローバル性革命』の著者でドイツの社会学者ガブリエラ・クビー女史も、「定期的にポルノの虜になっている人は、愛や家族、そして父親や母親になる能力を失ってしまっています」と、その本質的な問題点に言及しています。

 加えて、「インターネットポルノ中毒」は、一般人だけにとどまる問題ではありません。キリスト教徒など、信仰者にとっても決して他人事ではないのです。

 次回は、キリスト教会にも広がる影響を確認しながら、性教育の在り方や性の問題に私たちがどう向き合っていくべきかなどを考えます。

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 次回は、「『性教育』について考える〈下〉」をお届けします。

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