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中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
  第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

第10回「同性愛」について考える(後編)

(中和新聞 2021年11月19日 通巻1412号より)

 このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回も前回に引き続き、「同性愛」について考えます。

■同性愛を生じさせる要因とは?
 前回、複数の調査結果などから、同性愛者の多くが幼年期から青年期に性的虐待を受けているか、問題を抱えた家庭や機能不全に陥った家庭に育っていることについて言及しました。

 米国ハーバード大学のロバート教授らも、幼年期の身体的あるいは性的虐待が同性愛を誘発させるという分析結果を2013年に発表しています。これらは幼年期の家庭生活が、同性愛形成に影響を与えたことを示しています。

 男性から性的虐待を受けた男性が、自らを同性愛者であると誤解するケースや、男性から性的虐待を受けた女性は、男性との性的関係を拒もうとするケースがあると指摘されています。また、同性愛を美化する作品(映画やドラマなど)、同性愛ポルノなどの文化が多感な青少年期に与える影響も軽視できません。

 2006年に200万人のデンマーク人を対象に行われた調査では、田舎で生まれた人よりも都市で生まれた人のほうが、同性のパートナーがいる比率が高いことが明らかになりました。この調査からも、同性愛が遺伝的な要因より育った環境、つまり後天的な要因の影響をより強く受けることがうかがえます。

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 さらに、もし「同性愛が遺伝子などによって先天的に決定される」のであれば、どの年齢層でも同性愛者の比率はさほど変わらないはずです。しかし、デンマークの調査によると、男女ともに同性愛者の比率が、年齢が高くなるにつれて急激に減少していることが明らかになりました。

■脳の「可塑性」と同性愛
 次に、脳の「可塑(かそ)性」(plasticity)と同性愛の関係について確認していきます。

 カナダ出身の、精神科医で医学博士のノーマン・ドイジは、著書『脳は奇跡を起こす』(2008年)の中で脳の可塑性について解説し、「脳は変化しないという20世紀の信念を捨てなければならない」と述べています。

 脳の細胞は一度失われると、二度と再生することはありませんが、脳への刺激で脳細胞の配列が変化し、壊死した細胞が担っていた機能を損傷していない部位が代替し、運動機能が回復されていく例などがあるのです。

 これが脳の可塑性です。つまり、継続的な行いが習慣になるなどで脳の機能が変化し、異性愛者が同性愛者に、同性愛者が異性愛者になる可能性があるのです。

 また、特定の性的指向に深くはまってしまうと、それがまるで先天的なものであるかのように本人に錯覚させてしまうケースもあるでしょう。

 一方、同性愛者の脳が反対の性の脳に似ているといった事実を裏付けるエビデンス(証拠)はありません。よって、同性愛者が先天的に特別な脳を持って生まれてきて、性的指向が「自らの意思に基づいて選択・変更できない」という主張も適切だとは言えないのです。

■後天的な要因がより大きな影響を与える
 同性愛を生じさせる要因をまとめると、①幼年期の身体的・性的虐待、②家庭問題、③父母の間違った性役割モデル、④幼年期の不安定な性同一性、⑤誤った性的体験(性的虐待)、⑥同性愛を美化する作品や同性愛ポルノなどの文化、⑦同性愛を認める社会風土(推進される教育)――以上のような後天的要因に加え、容姿や体型などの身体的特徴、性格などの先天的な要因によって、同性愛といった性的指向が形成されるのです。この中でも、後天的な要因の影響がより大きく、先天的な要因の影響はごく小さいものにすぎません。

 よって、幼年期に形成された同性愛の性的指向は確定的ではなく柔軟なものと考えるべきです。しかし、「自らの意思に基づいて選択」させることによって同性愛の性向を拒否せず受け入れてしまえば、性的指向は心に深く定着します。

 さらに強い依存性によって同性愛行為を反復すると、同性愛という性的行動様式が形成され、結果的に「自らの意思に基づいて変更できない」と見えるようになるのです。

 1990年代初めに同性愛を支持する学者や団体によって、「同性愛は遺伝的で先天的である」と誤解させるような論文が積極的に発表されました。しかし10年ほど後には、それらの論文の間違いが明らかになっています。

 同性愛の先天性を主張した同性愛者の学者たちは、口々に「同性愛は精神疾患ではない」と主張しました。彼らは何より自己正当化したかったのだと推測できます。

 この他にも、一卵性双生児など、同様の遺伝的要因を持った人でも、性的嗜好が一致するとは限らないことなど、多くの事実が指摘されています。

 以上のことから、同性愛は必ずしも決定的なものではなく、「自らの意思に基づいて選択」したケースも少なくないと推測できます。

 今年3月の札幌地裁判決文で、同性愛は「自らの意思に基づいて選択・変更できないことは、現在は確立した知見になっている」と謳われました。しかし、その主張は科学的な根拠があまりにも薄いものだったと言わざるをえません。

 同性愛についてさらに理解を深めたい方は、昨年邦訳出版された『同性愛は生まれつきか? 同性愛の誘発要因に関する科学的探究』(吉源平〈キル・ウォンピョン〉、他5名)の一読をお薦めします。

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 次回は、「『性教育』について考える〈上〉」をお届けします。

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