青少年事情と教育を考える 198
「こども基本法案」に込められた家族の意味

ナビゲーター:中田 孝誠

 今月、自民党と公明党は「こども基本法案」を国会に提出しました。
 今後、「こども家庭庁設置法案」と併せて、国会で審議されます。
 また、立憲民主党が「子ども総合基本法案」、日本維新の会は「子ども育成基本法案」をそれぞれ提出しました。こちらも今後審議される予定です。

 このうち、自公の「こども基本法案」は、この法律の目的を「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、…将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して」とうたっています。
 日本が批准している国連の「児童の権利条約」の理念を国内法として取り入れるというわけです。

 また、自公の法案は基本理念として、「こどもの養育は家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、十分な養育の支援・家庭での養育が困難なこどもの養育環境の確保」「家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境の整備」を行うと記しています。

 ちなみに、日本維新の会がまとめた「子ども育成基本法案」も子供の教育と子育ての第一義的責任は父母が有するということと、その父母に切れ目のない支援を行うということは、うたっています。

 父母その他の保護者が子供の教育の第一義的責任を有する」というのは、教育基本法の第10条に定められている内容です。
 「こども基本法案」「子ども育成基本法案」は、教育基本法の条文を受けたものになっています。

 また、児童の権利条約については、子供の権利のみを過剰に強調しているといった批判がなされることがあります。
 ただ、条約の内容を見ると、例えば、家族は「社会の基礎的な集団」であり、「社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助が与えられるべき」だと記されています。

 そして、「児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきである」とうたわれています。
 つまり、子供は良き家庭環境の下で成長することが大切で、そのために家庭を支援することが重要だというわけです。
 少なくとも、「こども基本法案」と「子ども育成基本法案」には、そのような理念が込められていると言っていいでしょう。

 次回もこの法案について取り上げたいと思います。