世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

北京で初のオミクロン株感染者、試練の「ゼロコロナ政策」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、1月10日から16日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 北朝鮮が弾道ミサイル発射(11日、14日)。文在寅・韓国大統領、「北京五輪出席は検討せず」と発表(12日)。米最高裁が企業のワクチン接種義務認めず(13日)。北京で初めてオミクロン株感染者が出る(15日)、などです。

 中国・北京当局は1月15日、北京北西部の海淀区で新型コロナウイルスの変異株「オミクロン」の感染者が同市で初めて1人確認されたと発表しました。
 昨年末からオミクロン株は北京の周辺に広がっていたのですが、ついに北京で感染者が確認されたのです。

 陝西省西安市は昨年12月23日、オミクロン株の感染拡大を受けて、事実上のロックダウンに踏み切っています。
 約1300万人の外出を禁じましたが、感染者は1カ月で約2000人に達し、封鎖解除にはなお時間がかかりそうな情勢です。

 さらに今年に入ってからは北京市に隣接する天津市でもオミクロン株の感染が確認され、約1400万人の全市民を対象としたPCR検査を実行中です。
 1月8日、市中感染者2人、9日にも21人、10日午前で計41人となっています。公表されている限り、中国でこれほど大規模なオミクロン株の流行は初めてです。

 北京と天津は高速道路で30分程度の通勤圏内です。市外に出る場合は48時間以内のPCR検査の陰性証明と地域の自治組織などの許可を得ることを義務付けられています。
 当局は感染者の居住するマンションや職場のあるビルなどを封鎖し、住民や接触の可能性のある人員に対してPCR検査を実施しました。北京冬季五輪まで1カ月を切り、中国政府はさらに警戒を強めているのです。

 新型コロナウイルス感染症拡大の長期化に中国の経営者が警戒を強めていることが分かりました。
 「日経」が中韓の有力紙と実施した「日中韓経営者アンケート」では、2022年の世界経済の見通しで中国の経営者の1割強が「悪化する」と回答しました。感染拡大と自国のゼロコロナ政策の影響を踏まえての判断なのです。

 習近平政権の威信を懸けた北京五輪の開幕を2月に控えており、中国・北京政府はオミクロン株を含めた感染を封じ込めるゼロコロナ政策の推進に躍起になっています。
 そして今秋には共産党の重要人事を決める党大会があるため、「指導部は少なくとも2022年秋まではゼロコロナ政策を続けるはず」との見方があります。

 コロナが2022年の経営に与える影響について「非常に悪い」「やや悪い」と答えた経営者は中国で計72.7%と3カ国で最多でした。
 有名な米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは、2022年の世界経済の「十大リスク」を発表し、1位に中国の「ゼロコロナ政策の失敗」を挙げ、中国が変異株を封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘しました。

 中国経済の傾きは、世界経済の傾きに直結するのです。