夫婦愛を育む 14
神をも裁く?

ナビゲーター:橘 幸世

 昨年、“The SHACK”(邦題『神の小屋』)という衝撃的な本に出合いました。
 ハリウッドで映画化され、女優すみれさんが出演したことで話題にもなりましたね。自費出版からスタートして、世界30カ国以上の言語に訳されるまでになったベストセラー小説です。
 神・イエス・聖霊が人のかたちを取って、主人公と対話するという設定で、キリスト教会からは異端視する声も少なくありません。

 幼い愛娘が誘拐・殺害されるという悲劇に見舞われた主人公は、守ってやれなかった自分を責めると同時に、何の罪もない娘にそのような恐ろしい事が起こるのを、そしてその凶悪犯がどこかで生きているのを、なぜ神は許しておかれるのか・・・・・・、大きな疑問を抱えたまま、神と距離を置いた、重苦しい歳月を送ります。
 人生の不条理に悩み苦しむ人間の思いを代弁するかのように、主人公は神・イエス・聖霊の三者にさまざまな疑問を問いかけ、三者はそれぞれの立場から、彼の心を整理し癒やしていきます。その過程に(私を含め)多くの読者が共感を覚えたのでした。

 中でも印象的だったのが、神の知恵が具現化したソフィアという存在との対話です。
 「神はなぜ、清らかな娘が残酷な殺され方をし、殺人者が生きているのを許容しているのか?」という主人公の思いに対し、彼女はこう語ります。「あなたは神が間違っていると言って、神を責め、神を裁いている。では、あなたが神に代わって人を裁きなさい。救われる人とそうでない人に分けなさい。あなたの子供たちも、5人のうち2人を救われる側に選びなさい。さあ、どの子にする?」
 そう迫られて主人公は、「できない! どの子が地獄に行くかなんて自分には決められない! 自分を代わりに地獄に送ってくれ」と泣きながら懇願します。そして、それが神の心情だったと悟り、また泣くのです。

 痛みしか見えない時は、神が見えなくなる。神から離れると、自分で善悪の判断をし、神を演じ、人を裁いてしまう。不条理の中にありながらも、神への信頼、善意への信頼に寄って生きることが大切などなど、たくさんのメッセージが詰まっています。
 多くの気付きと学び、力をもらった本でした。お薦めです。